1.これまでに解析したプレシナプスエンドフェノタイプを示す複数のモデルマウス(αCaKII+/-、Shn2-/-、抗うつ薬投与、電気痙攣刺激)を用いて、歯状回又は海馬の遺伝子発現変化を比較検討したところ、これらの間で有意な相関が見られた。GO解析の結果、共通して変化する遺伝子にはコレステロール代謝経路、神経発達に関連するものが多く見られた。全てのモデルに共通し、発現変化が顕著なものとしてFrzb、Batf3、Grpが新たに同定され、これらがプレシナプスエンドフェノタイプのバイオマーカーとなる可能性が示された。 2. 電気痙攣刺激によって作製したモデルの詳細な解析によって、プレシナプスエンドフェノタイプの形成にはNMDA受容体の活性化とタンパク質合成が必要なことが示された。さらに、エンドフェノタイプの維持には、入力シナプスにおける興奮抑制バランスの変化による興奮性上昇と、NMDA受容体の活性化が必要なことが示された。また、同モデルではプレシナプスエンドフェノタイプの形成と関連して、ドパミンによるシナプス修飾が顕著に増強されることが明らかになった。 3. 前年度の解析によって、発達期の興奮性上昇によって、2~4週齢の間でプレシナプスエンドフェノタイプの誘導効果が出現することが明らかになった。そのメカニズムを解析するため、2~4週齢での変化を検討したところ、シナプス伝達に対するTrkB受容体アゴニストの効果が大きく変化することが示された。さらに、モデルマウスにおける遺伝子発現変化と通常のマウスの2~4週齢での発現変化を比較したところ、TRPチャネル等が共通して変化することが示された。これらが、プレシナプスエンドフェノタイプの形成能獲得に関与する可能性が示唆された。
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