公募研究
細胞内で働くダイニンの重鎖遺伝子は1種類に限られているが、ダイニンは多様な役割や運動様態を示すので、ダイニンの結合タンパク質による制御機構が注目される。本研究では、ダイニンとその制御タンパク質からなる複合体の微小管との相互作用の実態と分子構築や構造変化を調べることを目的としている。まず、ダイナクチンp150のコイルドコイル領域(CC1)の断片はダイニンに結合し、ダイニンを微小管から解離させる作用をもつことを明らかになったので、CC1領域の構造解析を進めるために大量で均一のフォームのCC1断片を得るべく、その長さをさまざまに変化させた多種類の組換え体を用意し、ゲルろ過法とショ糖密度勾配遠心で解析したところ、それぞれシングルピークとなり、ダイマーであることが予測されるような断片を得ることができた。また、p150のアイソフォームにはK-rich領域を含むもの(1A)と含まないもの(1B)が存在するが、ダイニン-ダイナクチン-BiCD2の3者複合体における両者の違いを調べたところ、1Aアイソフォームを含む3者複合体は微小管上を一方向にプロセッシブに運動するものが数多くみられたが、1Bアイソフォームの3者複合体は全く微小管に結合しないことがわかった。この結果は、ダイニン-ダイナクチン-BicD2の3者複合体がhighly processiveに運動するという、海外の複数のグループによる最近の報告に対し、それはK-rich領域を含む場合にのみ当てはまることを示した。さらに、K-rich領域を含まないアイソフォームは微小管との相互作用において全く異なる様相、すなわちCC1断片の場合と同じ効果を示すことを、新たな知見として得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
ダイナクチンのサブユニットp150内の領域について、CC1はダイニンを微小管から引き離す作用があること、また、K-rich領域の有無がダイニン-ダイナクチン-BicD2複合体の振る舞いを決めていることなど、制御マシナリーに関する新たな知見を得ることができた。
均一なフォームのCC1断片を得ることができたので、結晶化を行う。うまういかなければ、研究協力者とともにクライオ電子顕微鏡法によって構造解析を試みる。構造が決定されれば、さらにCC1断片の機能部位の絞り込みのための組換え体を作製して、構造と機能の関係を調べる。また、当初の計画に含めていた、ダイニン-Lis1-Nudel1の3者複合体についても微小管上の振る舞いを調べ、2者複合体との違いを明らかにする。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Molecula Biology of theCell
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