研究実績の概要 |
マイコプラズマの滑走運動は新規の運動様式であり、そのメカニズムの解明が重要課題である。この運動は、Gli349タンパク質が「足」のように機能し、構造変化することによって起きる。しかし、Gli349の運動機構を明らかにするためには、Gli349の詳細な立体構造とダイナミクスの解明が必要である。Gli349は18個のリピート構造を持ち、非常にフレキシブルな巨大なタンパク質である。そのため、NMRやX線結晶構造解析による構造決定は難しい。そこで本研究では、Gli349を短い構造ユニットに断片化して、各々の立体構造とダイナミクスを解明したのち、それらを連結して再構築することにより、Gli349全体の詳細構造とダイナミクスの解明を目指した。平成28年度は、次の成果を得た。
Gli349における構造ドメインの境界を探索するために、27年度までは情報科学的アプローチを用い、K, L, Mリピートに相当する領域から構成されるKLMと呼ばれる構造領域が一つの構造ドメインを構成していることなどを同定してきた。そこで28年度は実験的アプローチを用い、Gli349全長をトリプシンで限定分解後、質量分析を行うことにより、構造ドメインの境界を探索した。その結果、トリプシン分解によって得られた境界もKLMの境界位置と同じであり、Gli349は大きく分けて少なくとも3つの領域(A-J), (K-M), (N-V)に分かれることが示唆された。 次に、KLMをトリプシン限定分解して得られた3つの領域(KLM1, KLM2, KLM3)のX線溶液散乱測定を行い、立体構造解析を行った。また、KLM2に可溶性タグをつけたコンストラクトも作製し、NMRを用いた詳細な立体構造解析を可能にした。 さらに、全長Gli349をV8プロテアーゼで限定分解する実験も行っており、現在、解析を進めているところである。
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