研究領域 | 運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性 |
研究課題/領域番号 |
15H01313
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須河 光弘 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (80626383)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 細胞骨格 / 構造機能相関 / FRET / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
重合しフィラメント形成する生体超分子(アクチンや微小管など)は細胞骨格を担い、その動的な重合・脱重合が細胞運動や形態変化など細胞活動の原動力となる。近年、重合体フィラメントの構造は均一かつ静的ではなく、不均一で動的に揺らぐことが示唆されている。例えば、F-アクチンとアクチン結合タンパクとの協同的結合は、アクチンモノマーに構造多型性があり、結合タンパクとの結合に伴うアクチンモノマーの構造変化が近傍へ伝播し、正のフィードバックが働き親和性が上昇するからと考えられている。F-アクチンの原子レベルの分子構造が解かれ、アクチンモノマーの構造のねじれが機能と密接に関係していることが分かってきた。しかし、依然F-アクチンの内部の構造ダイナミクスの情報が欠けている。よって、F-アクチンの動的な構造変化と機能の関係は明らかではない。そこで、偏光した蛍光色素間のFRET(偏光FRET)であれば溶液中を回転拡散している生体分子であっても、構造のねじれ(角度変化)を捉えられる。偏光FRET法により、細胞内のF-アクチンの構造状態について、モノマーレベルで、その時空間ダイナミクスを捉えることを目指している。偏光FRET法を実現するためにはタンパク質の部位特異的に修飾するためにシステイン反応性のmaleimide基のbifunctional dyeが必要となる。そこで、市販の蛍光色素を改変し目的に合う蛍光色素を合成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの偏光した蛍光間のFRETを利用した偏光FRET法であればアクチンのGF変換の動きを直接捉えられる可能性がある。この偏光FRET法を実現するには2つの蛍光色素を偏光させ、さらにタンパク質のCysへ部位特異的に蛍光修飾するために、システイン反応性のbifunctional dyeを2つ必要とする。当初計画では2つの蛍光色素の内1つはローダミンのbifunctional dyeを使用する予定であったが、製造中止となったため使用を中止した。そこで、Cy3-bis-NHSとCy5-bis-NHSを基にして蛍光色素の改変を進めることにした。Cy3-bis-NHSおよびCy5-bis-NHSの2つのNHS基をmaleimide基へ改変し、Cy3-bis-maleimideおよびCy5-bis-maleimideを合成した。他の研究目的で以前に用意していたkinesin-1のdouble Cys変異体に対してCy3-bis-maleimideを修飾したところ部位特異的に修飾できることを確認できた。しかし、蛍光修飾したサンプルの2割ほどで、タンパク分子同士の架橋が起きていた。これは変異導入した2つのCysの距離が近過ぎたためにCy3-bis-maleimideの2つのmaleimide基が同じタンパク質のCysと反応する前にそれぞれ別のタンパク分子のCysと反応して架橋が起きてしまったと考えられる。そこで、作成途中にあったアクチンのCys変異部位を再度検討する必要が出てきた。
|
今後の研究の推進方策 |
合成したCy3-bis-maleimideおよびCy5-bis-maleimideをタンパク質へ部位特異的に修飾する際に、タンパク同士の架橋を防ぐために2つのCys変異部位をどの程度離せば良いかの指針を得た。これに基づいて、さらに予想されるGF変換に伴うFRET効率の変化が最大となるCys変異部位を再度探索し、アクチンのCys変異体の作成を進めている。本年度の前期にCys変異体の作成は終了する予定であり、Cy3-bis-maleimideおよびCy5-bis-maleimideの修飾の可否を試験し、アクチンの重合活性への影響などを確認する。重合能に重大な影響がないことを確認でき次第、偏光FRET計測を行い、アクチンのGF変換に伴う構造変化を検出する。
|