前年度、ショウジョウバエ細胞で微小管プラス端動態に影響を与えることが知られている5因子およびショウジョウバエS2細胞由来のチューブリンを精製し、in vitroで微小管動態再構成実験を行った。その結果、全ての因子を反応させたときに伸長、短縮、休止を繰り返す微小管が生み出され、このときの伸長速度、短縮速度も細胞内のものに近い値が得られた。今年度は、細胞周期の間期から分裂期へ進行する時の微小管動態の変化を再現するため、いくつかの分裂期特異的タンパク質キナーゼで因子をリン酸化した場合の微小管動態を解析した。まず、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)に着目した。しかし、5因子にさらにCDKを加えても、微小管の動態は有意には変化しなかった。次に、分裂期に活性化することが知られているポロキナーゼ(Polo)に着目した。興味深いことに、5因子を含む再構成系において、Poloキナーゼによる因子のリン酸化処理で微小管がより動的になる様子が観察された。5因子のうち、少なくとも2つの因子がリン酸化により活性の制御を受けていることも明らかとなった。最後に、細胞内においてそのキナーゼを薬剤により阻害すると、分裂期の微小管(激しく動的)は間期微小管の動態(それほど動的でない)のように変化した。以上の結果より、分裂期進入時に見られる、微小管動態の転換は、POloキナーゼによるこれらの微小管関連タンパク質のリン酸化制御により生じている可能性が示唆された。これらの結果は論文としてまとめ、Journal of Cell Biology誌に発表した。
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