研究領域 | 運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性 |
研究課題/領域番号 |
15H01321
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉村 薫 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定助教 (50466033)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アクチン / 力 / ショウジョウバエ / 形態形成 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエの翅上皮では、体幹側から翅に引張り力が作用し、この外力が細胞配置換えの方向を決定する情報をコードする。しかし、細胞がどのようにして外力の向き(i.e. 遠近軸方向)を感知するのか、そして感知した情報をどのようにして細胞配置換えを実行する分子マシナリーに伝えるのかは不明であった。 外力が駆動する細胞配置換えの分子機構を明らかにするために、2015年度はアクチン結合タンパク質のスクリーニングを実施した。その結果、F-アクチン切断因子であるActin interacting protein 1 (AIP1) が外力依存的に前後軸方向の細胞接着面に濃縮することを見出した。コントロール個体では前後軸方向から遠近軸方向に細胞接着面が組み換わるのに対して、AIP1 RNAi個体ではそのような細胞配置換えの方向性がほぼ消失し、細胞の六角格子化が損なわれていた。AIP1と共に働くことが知られているcofilinもしくはcoronin-1のRNAiでも同様の異常が検出された。さらに、F-アクチンの安定化薬剤であるJasplakinolide投与でも、細胞配置換え方向の偏りが弱まった。この結果は、AIP1とcofilin、coronin-1がF-アクチンの再編成を促進するという既存研究の結果と合致する。そこで、AIP1やcofilin、coronin-1の機能欠損がF-アクチンの細胞内局在や動態に与える影響を調べたところ、これらのアクチン制御因子はF-アクチンの正しい細胞内局在に必要であることがわかった。以上から、AIP1とcofilin、coronin-1がF-アクチン制御を介して細胞配置換えを駆動し、その結果、多細胞パターン形成や組織形態形成が実現されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外力により駆動される細胞配置換えの制御因子としてAIP1とcofilin、coronin-1を同定し、F-アクチンの再編成が細胞配置換えに必要であることを明らかにするなど、研究計画を順調に遂行することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、AIP1が外力依存的に前後軸方向の細胞接着面に濃縮する仕組み、AIP1とcofilin、coronin-1が細胞配置換えを制御する仕組みについて解析を進め、研究成果をまとめた論文を投稿する。
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