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2015 年度 実績報告書

重合分子モーターにより制御されるプラスミド分配装置の分子機構

公募研究

研究領域運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性
研究課題/領域番号 15H01326
研究機関横浜市立大学

研究代表者

林 郁子  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (80464527)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード細胞骨格 / プラスミド分配 / 重合分子モーター / 遺伝子分配 / 微小管 / 蛋白質間相互作用 / 結晶構造解析 / 電子顕微鏡解析
研究実績の概要

本課題はcytomotive filamentとよばれる重合性のタンパク質(重合分子モーター)TubZが生み出す動力によって制御されるセレウス菌低コピー数pXO1様プラスミドの分配機構を分子レベルで明らかにすることを目的とする。TubZは毒素プラスミドをもつバチルス属亜種に保存された真核生物チューブリンの相同タンパク質であり、毒素プラスミドの分配に必須である。私達はこれまでTubZの結晶構造の決定および試験管内における重合反応の再構成系を確立するとともに、tubZと同じレギュロンにコードされる2つのDNA結合タンパク質TubRとTubYがtubRZオペロンの転写制御に関わることを明らかにした。またTubRの結晶構造とDNAの認識配列、オペロンにおける結合領域を決定した。
平成27年度はTubZの重合活性化の分子機構を詳細に解析することに焦点を当てた。TubRやTubY、DNA存在下でのTubZのGTP加水分解能の測定と、重合したTubZの総量を定量化する実験を相補的に行うことで、TubZ繊維の重合速度と脱重合速度の評価を行った。TubR:DNA複合体の有無に関わらずTubZのGTP加水分解能は変化しなかったが、TubR:DNA複合体の存在下でTubZ繊維の脱重合速度は低下した。またDNAの存在比やTubYによってもTubZ繊維の脱重合速度が変化することがわかった。さらにTubR、TubYの各種変異体も含めての解析を行うことで、それぞれのDNA結合タンパク質のDNA結合能がTubZの活性化に必須であることも明らかにした。
TubRの結合領域はpXO1上で繰り返しに連なっており、およそ80塩基対の領域に複数のTubRが相互作用することで複合体が高次構造を形成することがわかっている。当該年度においてはこの高次構造を形成した複合体の結晶化のための試料調製まで完了し、現在結晶化スクリーニングを行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでTubZのGTP加水分解能はNADHを利用した吸光度測定法によって解析を行ってきた。当該年度においてGTPの放射性同位体標識化合物を利用することで、GTP加水分解能ばかりでなく重合により形成されたTubZ繊維の総量を定量化した。この解析法により繊維の伸長端における重合能ばかりでなく、マイナス端の脱重合能が評価できるようになった。TubR:DNA複合体によってTubZの重合反応自体はほとんど変化しなかったが、脱重合反応は抑制されることがわかった。濁度測定によるTubZの重合活性検定と電子顕微鏡解析によって繊維状構造を解析したところ、TubR:DNA複合体の存在下でTubZ繊維の総量が上昇していることが示唆された。これらの活性は、DNA結合能が欠損したTubR変異体を用いた場合には観察することができない。またセントロメア配列をもたないDNAを用いた反応系でも繊維状構造の増加はみられなかった。
TubR:DNA複合体の結晶化のための試料調製は完了し、結晶化スクリーニングを行ったところ複数の条件で結晶が得られた。今後条件検討を行い構造決定を目指す。TubYの結晶化についても、N末側DNA結合ドメイン、C末側多量体化ドメインともに結晶が得られている。N末側DNA結合ドメインについては、高分解能のx線回折データが得られており、現在C末側ドメインの結晶に重原子導入を行っている。C末側多量体化ドメインについては結晶化まで完了しており、凍結条件の検討を行っている。

今後の研究の推進方策

(1)平成28年度はTubR:DNA複合体の結晶化条件の改良を行うとともに結晶構造の決定を目指す。TubRの結晶構造はすでに決定しているため、分子置換法による構造決定を行う予定である。
(2)TubYについて、DNA結合ドメイン、多量体化ドメインの結晶化まで成功し、SeMetを導入したタンパク質についても精製は完了している。多波長異常分散法による結晶構造決定を目指す。しかしN末側のSeMet導入タンパク質の結晶性が悪いため重原子導入も検討中であり、その場合は重原子同型置換法にて立体構造を決定する。さらにTubYのDNA結合領域について、ゲルシフト法とフットプリント法によって解析し、TubY:DNAの複合体構造を決定する。それと並行して電子顕微鏡によるTubY:TubZ:TubR:DNA複合体解析を行う。
(3)全反射照明蛍光顕微鏡を用いたTubZ重合の分子解析を行う。TubZを蛍光化合物で直接標識するための変異体は現在作成中である。TubR・TubY結合領域のDNAは蛍光標識したプライマーを用いたPCR法によって調製する。試験管内でTubZ重合を行うためのタンパク質濃度等の条件検討は完了している。またそれぞれのタンパク質と変異体の調製も確立している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] CLASP2 Has Two Distinct TOG Domains That Contribute Differently to Microtubule Dynamics.2015

    • 著者名/発表者名
      Maki T., Grimaldi A. D., Fuchigami S., Kaverina I., Hayashi I.
    • 雑誌名

      J Mol Biol

      巻: 427 ページ: 2379

    • DOI

      10.1016/j.jmb.2015.05.012

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] チューブリン様タンパク質TubZによる低コピー数プラスミド分配機構の分子解析2016

    • 著者名/発表者名
      林郁子
    • 学会等名
      日本細菌学会総会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター
    • 年月日
      2016-03-23 – 2016-03-25
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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