本課題はcytomotive filamentとよばれる重合性のタンパク質(重合分子モーター)TubZが生み出す動力によって制御されるセレウス菌低コピー数pXO1様プラスミドの分配機構を分子レベルで明らかにすることを目的とする。TubZは毒素プラスミドをもつバチルス属亜種に保存された真核生物チューブリンの相同タンパク質であり、毒素プラスミドの分配に必須である。私達はこれまでTubZとその関連因子であるDNA結合タンパク質TubRの結晶構造を決定するとともに、試験管内における重合・脱重合反応の再構成系を確立し、TubZの動力産生・制御機構を評価することを試みてきた。 平成28年度はTubZの重合活性化の分子機構をより詳細に生化学的に解析した。この条件に基づき全反射照明蛍光顕微鏡を用いたTubZ重合反応の可視化実験を行った。TubZタンパク質はN末端やC末端に修飾を導入すると機能阻害されることがわかっており、従来細胞生物学で用いられるGFP融合タンパク質を利用することはできない。そこでTubZ配列の内部に変異を導入して化学修飾により蛍光標識を行った。また同様の変異体を用いて、ビオチン化することも可能にした。これらの標識TubZ変異体を用いることで、顕微鏡において基板上にTubZ分子を一部固定化し分子動態を観察する系を構築した。 TubZにはもう一つのDNA結合タンパク質TubYが制御に関わる。TubYは2つのドメイン構造をもつことが配列解析からわかっているが、そのうちのひとつである多量体化ドメインの結晶構造を決定した。結晶構造をもとに変異体を作成し、TubZへの影響を生化学的に解析した。
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