研究領域 | 高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解 |
研究課題/領域番号 |
15H01339
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 信也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50381588)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FACT / Spt16 / HP1 / Swi6 / ヘテロクロマチン / ユークロマチン / H3K9me / lncRNA |
研究実績の概要 |
ヘテロクロマチン高次構造は一過的に転写されるlncRNAを反応基質とするRNAiに依存して確立される特徴を持ち、いったん確立されたヘテロクロマチンはFACTを含む複数のエフェクタータンパク質によって安定に維持されるモードに移行する。FACTがヘテロクロマチン化領域内でサイレンシングに寄与する分子メカニズムを遺伝学的・生化学的に解析した結果、ヘテロクロマチンタンパク質HP1とFACTが相互作用してlncRNAの転写を制御してクロマチンを安定維持する事を見いだした。更に興味深い事に申請者らはHP1とFACTによるクロマチン制御系はユークロマチン上でヒストンH3K9me非依存的にも起きる現象である事を発見しており、本研究課題ではその分子メカニズムと生物学的意義の解明を目指した。分裂酵母HP1ホモログSwi6のChIP-seq解析を行ったところ、おどろいたことに染色体上のH3K9me非存在箇所にSwi6が高度に結合することが明らかとなった。またswi6遺伝子を破壊した酵母株ではユークロマチン上のFACT局在パターンが大きく乱れることを発見しており、以上の結果はヘテロクロマチン以外で機能するHP1の存在とその生物学的意義を示すものである。また試験管内実験においてSwi6とFACT構成因子Spt16が物理的に結合することを発見しており、両因子の結合表面の限局にも成功した。今後はSwi6と結合の切れるSpt16変異体の単離を目指して研究を進め、この変異体を持つ酵母株を用いて染色体全体で何が起きるのかを詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では以下に定めた大まかな4つのテーマに沿って研究を進行させており、初年度ではおもにi)とii)とiii)の解析を進めた。 ⅰ) FACTとHP1分裂酵母ホモログSwi6の相互作用解析 ⅱ) swi6破壊株とpob3破壊株を用いたRNA-sequencing ⅲ)ヒストンH3K9me非依存的なHP1タンパク質結合領域の解析 ⅳ)ヒストンH3K9me非依存的HP1転写制御レポーター株の構築と遺伝学的解析 まずi)では試験管内での相互作用解析系構築に成功し、Spt16N末端とSwi6C末端の結合を突き止めた。ii)ではswi6破壊株とpob3破壊株のRNA-seqからゆークロマチン上のlncRNAの中でも特にantisense RNAの転写上昇が両方の変異株で共通して起きる事を発見しておりユークロマチン上でのSwi6とFACTの共役メカニズム機構の一端が明らかとなった。iii)ではIP効率の高いSwi6抗体の作成に成功し、ChIP-seq結果からユークロマチン上でのH3K9me非依存的Swi6局在場所を突き止める事に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では以下に定めた大まかな4つのテーマに沿って研究を進行させており、初年度ではおもにi)とii)とiii)の解析を進め、ii)とiii)に関しては研究目標は概ね目標を達成した。 ⅰ) FACTとHP1分裂酵母ホモログSwi6の相互作用解析 ⅱ) swi6破壊株とpob3破壊株を用いたRNA-sequencing ⅲ)ヒストンH3K9me非依存的なHP1タンパク質結合領域の解析 ⅳ)ヒストンH3K9me非依存的HP1転写制御レポーター株の構築と遺伝学的解析 今後はi)についてSwi6との結合が切れるSpt16点変異株を作成して生化学的解析と遺伝学的解析を継続してすすめる。iv)についてはNGS解析結果を参考にレポーター構築系の最適化を行いSwi6を目的領域へ強力にリクルートするシステムの構築を行ったのち、レポーター遺伝子の発現調節機構解明につなげる。
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