研究実績の概要 |
血管内皮細胞が VEGF 刺激を受けて早期活性化し、転写サイクルシステムを動的に動かす仕組みを解明するため、時間分解能を上げた VEGF 刺激 0,5,15,60 分での発現アレイと FAIRE-seq を追加した。VEGF 刺激5分からクロマチン全体が変動し、急性期誘導遺伝子 locus が活性化し、15分で元にもどることを見出した。さらに VEGF 依存的な血管新生を主導する重要な後期転写因子群 (ERG2/3, KLF4, NR4A1-3, ATF3) などの制御領域のエピゲノム動態をヒストン修飾酵素特異的抗体を用いた ChIP-seq でゲノムワイドに捉え、その変化を ChIP-qPCR 法にて validate した。特に H3K27me3 修飾が入ったまま、H3K4me3 修飾が VEGF 刺激で増えて Bivalent になる仕組みを解き明かすため、H3K4me3 修飾を入れるトリソラックス酵素群のアダプタータンパク PTIP がどうして上述した特定の重要転写因子群の制御領域に濃縮するのか、Egr3 転写誘導に必須な転写因子 NFAT, CREB, SRF との相互作用を免疫沈降法で確認した。その結果 PTIP の N 末 BRCT ドメインに NFAT1 が特異的に結合し、NFAT と共に核内移行することで VEGF エピゲノムスイッチを引き起こす新たな機構を見出した。さらに H3K27me3 修飾がありながら、転写が進む機構を解明するため、ポリコーム (PRC)2 がこの Bivalent 修飾に必要かどうか EzH2 や Suz12 のノックダウンで調べたところ、他のポリコーム抑制領域を異なり、VEGF 急性期転写制御にはPRC2 が必要でノックダウンすると逆に転写が抑制される結果となった。そこで現在 PRC2 が結合する前の PRC1 バリアントの結合可能性を調査しており、内皮において特有のPRC1 バリアントが一過性に転写を促進するデータを精査しているところである。全てまとめて論文化する方針である。
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