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2015 年度 実績報告書

転写産物の高精細プロファイリングによる転写と転写後プロセシングの共役機構の解明

公募研究

研究領域高精細アプローチで迫る転写サイクル機構の統一的理解
研究課題/領域番号 15H01350
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

黒柳 秀人  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード転写 / 新生RNA / 線虫 / 細胞分画 / 核質 / クロマチン / RNAプロセシング
研究実績の概要

計画Aii)として、4-チオウリジン(4SU)を用いて線虫生体内で新生RNAを代謝標識し、チオ標識RNAをビオチン化して磁気ビーズで精製する方法を試みたところ、イントロンを保持したmRNA前駆体や一部のイントロンのみが除去されたプロセシング中間体を濃縮できることが確認された。さらに、ビオチン化の効率が従来品より何倍も高い新たなビオチン化試薬の報告(Molecular Cell 59, 858, 2015)が出たため、その試薬を取り寄せてビオチン化の条件検討を行い、低いバックグランドで新生RNAを濃縮する方法をある程度確立した。Aiii)としてT. gondiiのウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を組織特異的に発現する遺伝子導入線虫を作製し、体壁筋または神経系でそれぞれ安定に発現する株を得た。
計画Bとして、4SUでの代謝標識により新生RNAをパルス標識して経時変化を追跡するための標識時間の検討を行った。その結果、5分間標識でmRNA前駆体が主に回収され、10分間標識では部分的にスプライシングされたRNAが多くなり、20分間標識ではほとんどが完全にスプライシングされたRNAとなることが確認された。
計画Cとして、上記Bの4SUによる新生RNAの代謝標識法と、平成26年度までの研究で確立した線虫個体から細胞核と細胞質に分画しさらに細胞核を尿素で可溶化される核質画分と不溶性のクロマチン画分に分画する方法を組み合わせて、新生RNAの細胞内局在とプロセシングパターンの経時変化を追跡できるか検討した。その結果、新生RNAの経時変化と画分間の移動をある程度追跡できることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまで一般使われていたビオチン化試薬よりも10倍以上効率がよい新たな試薬が報告されたため、その試薬を取り寄せてバックグランドの低いビオチン化条件を検討するのに時間を要した。一方、細胞分画を行うには液体培養による線虫の大量飼育が必要で、餌の準備などに時間と労力を要した。さらに、RNA調製時にRNA分解のリスクもあるため、代謝標識後の経時的な回収と分画、RNA抽出、その後の新生RNAの精製までを実行して欠けることなく試料を調製するのはたいへんであった。それでも、大規模シーケンス解析のライブラリ調製ができる量の標識RNAを全画分から回収するには至っていない。

今後の研究の推進方策

計画Cとして、引き続き野生型線虫を同調して大量に飼育し、新生RNAを代謝標識して経時的に線虫を回収し、細胞分画、RNA抽出、新生RNAの精製までを行って、大規模シーケンス解析する予定である。
計画Dとして、lst-3変異体線虫でも、同様に新生RNAの代謝標識と細胞分画による経時変化の追跡を行う予定であるが、労力を要するため、野生型株で経時変化を追跡するのに適すると判断された画分、すなわち、クロマチン画分における標識RNAの経時変化に的を絞って解析する予定である。
計画Eとして、転写速度が低下していると考えられるPol IIの変異体株を使って新生RNAを代謝標識し、実際に新生RNAの生成速度やその先のプロセシングの進行過程が野生型株と異なるか、比較検討する。
これらの計画とは別に、転写と共役してどの程度スプライシングが起こっているかを明らかにし、それが野生型とlst-3変異体でどのように異なるかを明らかにするために、同調したL1幼虫の核を調製してrun-onアッセイにより新生RNAを標識し、精製してRNAの大規模シーケンス解析を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Evolutionarily conserved autoregulation of alternative pre-mRNA splicing by ribosomal protein L10a.2016

    • 著者名/発表者名
      Satomi Takei, Marina Togo-Ohno, Yutaka Suzuki and Hidehito Kuroyanagi
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1093/nar/gkw152

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Splicing factors control C. elegans behavioural learning in a single neuron by producing DAF-2c receptor.2016

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Tomioka, Yasuki Naito, Hidehito KUROYANAGI, and Yuichi Iino.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1038/NCOMMS11645

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Spatial and temporal analysis of nascent pre-mRNAs in living animals.2016

    • 著者名/発表者名
      Eichi Watabe and Hidehito Kuroyanagi
    • 学会等名
      RNA 2016: The 21st Annual Meeting of the RNA Society(第18回日本RNA学会年会共催)
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-06-28 – 2016-07-02
    • 国際学会
  • [学会発表] 個体レベルで行う組織特異的転写後プロセシングの空間的・時間的動態の解析2016

    • 著者名/発表者名
      渡部栄地、黒柳秀人
    • 学会等名
      冬の若手ワークショップ2016@山中湖
    • 発表場所
      山梨県南都留郡山中湖村
    • 年月日
      2016-02-04 – 2016-02-06
  • [学会発表] mRNA前駆体の転写とスプライシングを自己制御する因子の解析2015

    • 著者名/発表者名
      黒柳秀人
    • 学会等名
      東京地区線虫勉強会
    • 発表場所
      東京大学浅野キャンパス
    • 年月日
      2015-11-07 – 2015-11-07
  • [図書] 基礎分子生物学II:遺伝子発現制御機構ークロマチン,転写制御,エピジェネティクスー(仮称)2017

    • 著者名/発表者名
      田村隆明・浦聖恵(編) 黒柳秀人を含むのべ38名(著)
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      東京化学同人
  • [備考] 東京医科歯科大学難治疾患研究所フロンティア研究室遺伝子発現制御学

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/end/

  • [備考] 新学術領域研究「転写サイクル」

    • URL

      http://transcriptioncycle.org/

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公開日: 2017-01-06  

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