本年度は、極低温電子顕微鏡による単粒子解析を行うために、アーキアRNAポリメラーゼ(RNAP)とRNAPを含む転写活性化型開始前複合体の調製を行なった。アーキアの基本転写因子TBPとTFB、転写促進因子TFEおよび転写活性化因子Tarの4種類のタンパク質を大腸菌発現系を用いて大量に発現させ、カラムクロマトグラフィーにより精製した。アーキアRNAPは、Thermococcus kodakarensisの培養菌体から抽出・精製した。各タンパク質をTar認識配列およびプロモーター領域を含む二本鎖合成DNAに加え、70℃でインキュベート後、混合溶液をゲル濾過クロマトグラフィーにより、転写活性化型開始前複合体を調製した。アーキアRNAP単独のネガティブステイン解析では、外形構造が電子顕微鏡により明らかになっているが、現在、複合体は解析中である。一方、TarとDNA複合体の共結晶を調製するために、結晶化ロボットを用いて、結晶化条件を検討した。その結果、一塩基突出した二本鎖DNAを用いた場合、Tar-DNA複合体の良質な結晶を得ることに成功し、ある有機溶媒系の沈澱化剤が結晶化に最適であることも分かった。Tar-DNA複合体結晶のX線回折を実験室レベルで確認したところ、2.5 オングストローム分解能であった。今後は、放射光施設で高分解能のTar-DNA複合体のX線結晶構造を決定し、Tarの転写活性化機構を解明する。もう一つの転写活性化因子である原核生物RcdAのDNA認識機構について解明することに成功し、DNA認識に重要なアミノ酸を同定することができた。RcdAの研究成果を国際的な学術雑誌に投稿中である。さらに、計画斑である大阪大学の中村先生らとMD解析により、アーキアRNAPのクランプとストークの連動に二つのサブユニットRpb3とRpb11が重要な構造変化をしていることを見出した。
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