重症薬疹(Stevens-Johnson症候群:SJS、中毒性表皮壊死症:TEN)は致死的疾患であり、加えて重篤な後遺症を残す。病理学的に皮膚や角膜の広範な細胞死を特徴とし、そのため皮膚・角膜のびらん・潰瘍を来す。これまで重症薬疹の発症機序は不明であったが、最近我々は重症薬疹における細胞死はネクロプトーシスであり、annexin A1/formyl peptide receptor 1(FPR1)の新規経路を介して起こることを明らかにした。 本研究において、新規経路によるネクロプトーシスの詳細なメカニズムを解明するとともに、この経路をターゲットとしたネクロプトーシス阻害作用を持つ重症薬疹治療剤を開発することを目的とする。 FPR1に対するアンタゴニスト探索:Gタンパク質共役受容体(GPCR)の一つであるFPR1に直接作用するシグナル阻害分子スクリーニングし、重症薬疹に対する治療薬の候補化合物の同定を行った。GPCR刺激によるGタンパク質およびβアレスチンシグナルを検出する系を構築した。この系を用いて化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、候補を絞り込んだ。今後、同定された候補化合物の構造展開を行う。さらに重症薬疹モデルマウスにおいて改善効果を検討し、低毒性のリード化合物の同定を行う。あわせてFPR1を介するシグナル伝達系へのリードの作用機序解析も行う。 FPR1アンタゴニストはネクロプトーシスのシグナル因子の阻害剤に比し、疾患特異性があり、他のネクロプトーシス現象を抑制せず、副作用も少ないことが期待される。
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