研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
15H01369
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 暢 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (50396917)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 肝臓 / 線維化 |
研究実績の概要 |
障害を受けた肝臓組織では、実質細胞(肝細胞)の細胞死を起点としたシグナルによって、線維質の産生・蓄積による損傷部位での物理的な組織構築の保持と、肝前駆細胞からの分化による細胞の新生(再生応答)が誘導され、組織の修復が行われる。これまでの解析から、肝臓の障害により活性化され、線維化誘導と再生応答を共に担う、新規ストローマ細胞の存在が示唆されている。本研究計画では、この新規ストローマ細胞の(1)厳密な同定・定義、(2)生理的重要性の証明、(3)活性化を担うシグナル/メカニズムの解析、を行うことで、肝臓における細胞死を起点とした生体反応誘導の中軸をなす細胞システムの解明を目指している。平成27年度には、以下の点を明らかにした: (1) マーカー分子の発現パターンやビタミンA貯蔵能についての解析から、新規ストローマ細胞は、肝臓の主要な間葉系細胞である肝星細胞とは明確に異なる細胞種であることを明らかにした。新規ストローマ細胞をマウス肝臓より効率良く分取および培養を行う系を確立した。また、骨髄移植マウスを用いた解析により、新規ストローマ細胞は障害時に骨髄より動員される細胞では無いことが明らかとなり、肝臓常在性の細胞であることが示唆された。 (2) 肝線維化誘導に必須であるサイトカインの産生細胞として、新規ストローマ細胞と肝細胞のいずれが重要であるのかについて、このサイトカインのノックアウトマウスを用いたレスキュー実験を行った。その結果、肝細胞特異的にサイトカイン発現をレスキューしても線維化の誘導は回復しないことを確認した。また、肝障害時には、新規ストローマ細胞自身においても繊維産生系および繊維溶解系の各種遺伝子発現プロファイルが変化し、結果的に線維化の促進に寄与することが明らかとなった。 (3) 肝細胞死に伴って放出されるATPが、新規ストローマ細胞に直接作用することを示唆するデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた解析を、おおむね予定どおり実施し、十分な成果と新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って推進するが、特に以下の事項については重点的に解析を進める予定である: (1)新規ストローマ細胞の発生過程における由来について、Cre-loxPシステムを用いた細胞系譜解析による検討を行うことで、具体的に明らかにする。 (2)線維化誘導に必須のサイトカインを、新規ストローマ細胞、あるいは、他の肝非実質細胞種特異的にレスキューさせた場合の効果を確認し、その産生細胞として重要な細胞種を総合的に明らかにする。
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