公募研究
本研究では、変性した神経細胞からどのようなシグナルが生体において派生していくかを解明することを目的とする。複雑な神経回路を持つ中枢神経系の傷害をより単純化するツールとして視神経挫滅モデルを用いた。小胞体ストレス応答の基幹転写因子ATF6alpha欠損マウスを用いて視神経損傷モデルを作製し、神経細胞死後のシグナルにおける小胞体ストレス応答の関与を解析した。野生型マウスを用いた解析から、視神経損傷後の網膜神経節細胞死に先んじて、小胞体ストレス応答が上昇すること、網膜における主要なグリア細胞であるミュラー細胞の活性化がおこることを見出した。組織学的解析および生化学的解析から、ATF6alpha欠損による小胞体ストレス亢進条件下では、視神経挫滅後の網膜神経節細胞死が亢進しており、ミュラーグリアの活性化、その細胞内シグナル伝達、加えて特定の神経栄養因子の発現上昇が減弱していることが明らかとなった。これらの個体レベルの解析結果を踏まえ、マウス網膜よりミュラーグリアを単離し培養系における解析を行った。その結果、培養系において認められる特定の神経栄養因子の発現が、小胞体ストレス誘導剤により減少することが明らかになった。発現の減弱は小胞体ストレスを軽減する化合物により改善した。マウス視神経挫滅モデルにおける小胞体ストレス軽減化合物の投与は、ATF6alpha欠損マウスで認められた神経栄養因子の減少を改善し、網膜神経節細胞死を軽減させた。これらから、視神経傷害後のミュラー細胞における内在性小胞体ストレス応答が、網膜神経節細胞の保護に重要な役割を果たす可能性が示唆される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Glia
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1002/glia.23139.
Journal of Neurochemistry
巻: 139 ページ: 1124-1137
doi: 10.1111/jnc.13714.