公募研究
本年度は線虫をモデルとした解析により、軸索切断後に近位側軸索の先端に形成される成長円錐が、切断の際に細胞体より分離された遠位側の残存軸索断片の切断部付近を忌避しながら伸長する現象を発見した。その現象の原因となる物質を探索したところ、アナンダミド合成酵素であるNAPE-PLDの線虫ホモログnape-1とnape-2の二重変異体では、その忌避が見られなかったことから、アナンダミドが切断された遠位の軸索の忌避に必要であることが示唆された。線虫では、ゲノム情報からは哺乳動物のアナンダミド受容体の明らかなホモログが見つかっておらず、これまでその有無は不明であった。そこで我々は、構造学的な観点から哺乳動物のアナンダミド受容体のアナンダミド結合に重要と考えられるアミノ酸を抽出し、その情報を用いて線虫に1000個以上ある7回膜貫通型受容体をコードする遺伝子についてスクリーニングしたところ、複数の候補を見出した。これらの候補について遺伝子欠損変異体を用いて調べた結果、神経軸索再生における再生忌避現象および外部からのアナンダミド投与による再生抑制シグナルに関与する7回膜貫通型受容体として、NPR-19およびNPR-32の2つを同定した。さらに、それらが三量体Gタンパク質Goを介してJNK MAPK経路を抑制することで、再生軸索の伸長方向を制御することを明らかにした。また本年度は、低分子量Gタンパク質Racの線虫ホモログCED-10が、プロテインキナーゼPAKの線虫ホモログMAX-2を介して神経軸索再生を正に制御することも見出した。
2: おおむね順調に進展している
アナンダミドによる遠位軸索の忌避機構について解明できた。CED-10関連の研究も進展している。
CED-10の上流経路について明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Genes to Cells
巻: 21 ページ: 311-324
10.1111/gtc.12338
PLoS Genetics
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Proc. Jpn. Acad. Ser. B. Phys. Biol. Sci.
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