研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
15H01377
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 雅裕 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00444521)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 病原体形成空胞 / 寄生胞 / インターフェロン / トキソプラズマ / 細胞死 |
研究実績の概要 |
空胞形成病原体を介したCaspase-11依存的なパイロトーシスの活性化には、空胞の膜が破壊される必要があるが、空胞膜の破壊機構及びそれに伴ってどのような宿主応答が起きるかについては不明な点が多い。そこで本研究においては、モデルとしてトキソプラズマを使って、空胞膜破壊機構について解析した。 トキソプラズマはエイズや抗癌剤投与下にある免疫不全の大人で致死的な脳炎や肺炎を引き起こす病原体である。また、健康な妊婦が初感染すると胎児に垂直感染し流産や死産、さらには新生児がトキソプラズマに感染した状態で生まれ先天性疾患の原因ともなる。しかし、トキソプラズマの空胞(寄生胞)がどのようにして壊され、その結果免疫的効果を発揮するのかよく分かっていなかった。 本研究で ①インターフェロン ガンマ刺激依存的に宿主タンパク質であるp62がトキソプラズマに蓄積すること、②トキソプラズマ感染細胞では、p62とインターフェロン ガンマ依存的にキラーT細胞活性化能が高まること、③p62欠損マウス個体で、トキソプラズマ不活化ワクチン投与に対するキラーT細胞活性が著しく低下することを示した。本研究成果は、近年我が国においても症例報告が急増しているトキソプラズマ症に対して、p62という新たな分子を標的とした新規のトキソプラズマ不活化ワクチン開発戦略を提供できるものとして大いに期待できるとともに、空胞破壊に伴う細胞死を伴う宿主応答機構に示唆を与えた。本研究成果は、米国の科学雑誌 『Cell Reports』に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究成果を、米国の科学雑誌 『Cell Reports』に掲載することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
トキソプラズマのみならず、Caspase-11を活性化するサルモネラやシトロバクターなどのグラム陰性バクテリアに対する免疫系の活性化に、パイロトーシスがどのように関与するのかを包括的に明らかにしていく。
|