公募研究
尿酸塩結晶やシリカナノ粒子などの刺激物は、マクロファージなどのミエロイド系細胞に貪食された後に、ファゴソームの損傷とそれに続くミトコンドリアの損傷を誘導する。このオルガネラの損傷は、細胞死やそれに伴う自然免疫応答の誘導に関わっている。自然免疫関連受容体であるNLRP3インフラマソームは、Caspase-1によるIL-1beta前駆体の切断と成熟型IL-1betaの放出を促進することにより、炎症を惹起する。尿酸塩結晶やシリカ粒子によるNLRP3インフラマソームの誤った活性化は痛風や塵肺などの炎症に起因する疾患の発症要因となるため、NLRP3インフラマソームは重要な研究課題である。我々は、NLRP3インフラマソームを抑制する化合物のスクリーニングを行い、NLRP3インフラマソームを強力に抑制する化合物を複数同定した。本化合物は、NLRC4やAIM2などが構成する、他のインフラマソームには作用がないことから、選択的にNLRP3インフラマソームを抑制すると考えられる。同定した化合物の作用段階について検討したところ、ファゴソーム損傷に応じて誘導されるミトコンドリア損傷の段階を阻害していることが明らかになった。オルガネラ損傷の連鎖がNLRP3インフラマソームの活性化に深く関わることが、改めて確認された。また、当該化合物は、その作用機序から、ファゴソームやリソソームの損傷に応じて誘導される細胞死を抑制できる可能性があり、一度失われたら回復が難しい細胞の細胞死を抑制することが出来るかどうかを今後検討する必要がある。痛風治療薬であるコルヒチンがNLRP3インフラマソームの活性化を抑制することを見出した。インフラマソームの研究成果とは別に、RNAウイルスの排除に関わるBax/Bak依存的なミトコンドリア細胞死の経路を見出した。感染防御応答における細胞死の新たな役割の解明につながる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
オルガネラ損傷の連鎖を抑制し、NLRP3インフラマソームの活性化を抑制する化合物を見出した。さらに、RNAウイルスに対する感染防御応答に関わる新たな細胞死経路の存在を明らかにした。
同定した化合物がNLRP3インフラマソームを抑制する機序を解明する。また、化合物が、マウス痛風モデルや塵肺モデルにおいて炎症症状を緩和するか否かを検討する。さらに、化合物が細胞死経路を抑制することが出来るか否かについても検討する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (3件)
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