公募研究
腫瘍壊死因子(TNFα)はIκBキナーゼ(IKKβ)を介してNF-κBを活性化するが、NF-κBが活性化されない細胞ではカスパーゼが活性化されてアポトーシスが誘導される。またカスパーゼの活性化が誘導されないときにはRIPK1、RIPK3、MLKLを介したネクロプトーシスが誘導されてDAMPsやサイトカインの放出にいたる。我々はTNFαによる細胞死と細胞内小胞輸送系を制御するRab11Bが密接に連関する事を見いだした。まずNF-κBの主要構成サブユニットRelAを欠損する細胞をTNFαで処理してカスパーゼを活性化すると、Rab11BのC末領域が切断されて膜から解離して分解されることを見いだした。さらにカスパーゼを抑制した条件化でネクロプトーシスを誘導すると、RIPK1やRIPK3から構成される複合体にRab11Bが会合することが確認された。またアポトーシスの誘導によりRIPK3はカスパーゼで分解される。これに対してネクロプトーシスによりRIPK3は細胞外に放出されるが、この過程をGFPで標識したRIPK3タンパク質を用いて蛍光顕微鏡下で実時間解析したところ、細胞膜の崩壊前と崩壊後に二つの過程でRIPK3は細胞外に放出さることや、細胞膜崩前の過程にRab11Bが関与することが判明した。さらにRab11Bのカスパーゼによる切断部位に変異を導入したノックインマウスと、Rab11B遺伝子にLoxP配列を導入したマウスを作成した。このマウスから細胞を取得して細胞死の応答を解析すると主に、Rab11Bと炎症と発がんとの連関を解析する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では細胞内小胞輸送と細胞死との連関を解析することを目的としてRab11Bとアポトーシスおよびネクロプトーシスの関連を解析してきた。これまでの研究によりRab11Bのカスパーゼによる切断部位を同定するとともに、この切断に関与するカスパーゼを生化学的に同定することができた。さらにネクロプロ-シスにともなうRIPK3タンパク質とRab11Bの特異的な会合を確認した。さらにRIPK3の細胞内局在変化についての実時間解析により、RIPK3の細胞外放出へのRab11Bの関与を観察することにも成功した。そこで当初の計画に従い、カスパーゼの切断を受容しないRab11Bのノックインマウスの作成に取りかかり、現時点でカスパーゼ耐性のRab11B変異アレルをホモで有するマウスの作成に成功した。さらにRab11Bと細胞死との関連を明らかにするために、Rab11Bのコンディショナナルノックアウトマウスの作成にとりかかり、このマウスについても作成できたことが確認できた。Rab11Bのノックインマウスだけでなく、Rab11Bのコンディショナナルノックアウトマウスの作成も順調に進行し、さらに蛍光顕微鏡による実時間解析のデータも得られたことから、当初の計画以上に研究は進行していると考えている。
当初の研究計画に従い、これまでに作成したRab11Bのカスパーゼによる切断部位に変異を導入したノックインマウスの炎症と発がんの応答を解析すると共に、取得した細胞を用いてRab11bと細胞死の連関の分子機構を解析する。Rab11B遺伝子にLoxP配列を導入したマウスを作成したマウスについて、これを Cre発現マウスと交配して肝細胞特異的なノックアウトマウスを作成して、肝細胞死の応答を解析するとともに、炎症と発がんとの連関を解析し、この分子機構を解明してゆく予定である。
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