研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
15H01386
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 教授 (50255361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GPx4 / フェロトーシス / 脂質酸化 / Lipo遺伝子 / 心不全 / ビタミンE / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
フェロトーシスはエラスチンやサルファサラジン(SAS)によりxCTを阻害し、グルタチオン量およびGPx4活性を減少させ、鉄依存的な脂質酸化により致死を引き起こす経路である。一方、研究代表者は以前よりGPx4欠損させると脂質酸化依存的新規細胞死が誘導されることを見出しており、致死に至る時間がフェロトーシスとGPx4欠損による細胞死とで全く異なることから違う経路を介する可能性があった。本年度はまず、タモキシフェン誘導型GPx4欠損細胞株を用いて、タミキシフェン添加によるGPx4欠損細胞死および、SASによるフェロトーシスとで細胞死経路に違いが見られるのかについて検討した。まず、フェロトーシスは鉄依存性であるが、GPx4欠損細胞死は鉄非依存性であること、また細胞内の脂質ヒドロペルオキシド生成もフェロトーシスでは鉄依存的であったがGPx4欠損では鉄非依存性であることを見つけた。またshRNAライブラリーのスクリーニングにより明らかにしたGPx4欠損細胞死を抑制できるshRNA(GPx4欠損細胞死実行遺伝子:lipo遺伝子)による ノックダウン細胞株、Lipo1-4KD細胞はタモキシフェン添加による細胞死は抑制できたが、SASによるフェロトーシスは全く抑制できなかった。このことから、GPx4欠損細胞死とフェロトーシスは異なるメカニズムを介する細胞死であることが明らかとなった。本年度はLipo-1遺伝子の機能解析をさらにすすめた。Lipo-1は全長cDNAも明らかになっていなかった遺伝子でその全長配列を決めた。スプライシングバリアントの報告はあったが機能未知遺伝子でこの分子にGPx4 欠損細胞死実行機能は全くなかった。またLipo-1はGPx4欠損細胞死において脂質酸化制御に関与する分子であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者がはじめに計画していた内容に到達できただけでなく、領域代表の田中先生の了解を得て、計画班の大村谷先生との共同研究によりCRISPER/CAS9法によるLipo-1およびLipo-2遺伝子の欠損マウスの変異マウスの作成にも成功した。現在ヘテロ変異な状態なので、新規遺伝子のKOマウスでの機能解析や細胞死への意義について来年度以降さらに解析をすすめたい。また袖岡先生らのグループからIM化合物について我々の細胞死に対する評価を行うなど、計画班の先生方との共同研究も進んだことは予想以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究で作成したLipo-1およびLipo-2マウスのKOでのフェノタイプの解析と、心臟特異的GPx4欠損マウスとのダブルKOマウスを作成することにより、実際にGPx4欠損による細胞死を個体レベル(心不全モデル)でも抑制できるのかを明らかにしたい(このダブルKOの解析は時間的には次年度までかかる可能性もある)。一方、Lipo-3のGPx4のダブルKOマウスは、既にできつつあり、28年度に個体レベル(心不全)での評価ができると期待している。Lipo-4に関しては、ユビキチン関連分子であるため、複合体タンパク質リガーゼの同定を行いたい。その準備段階のFLAG-Lipo4細胞の樹立には成功しているため、性状解析、複合体の解析をすすめたいと考えている。
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