公募研究
NF-kB の細胞死抑制に中心的な役割を果たすcellular FLICE-inhibitory protein (cFLIP)は腸上皮や肝細胞のアポトーシスとネクロプトーシスを抑制することが遺伝学的に明らかになっているため、cFLIPコンディショナルノックアウトマウスとNestin-Creマウスを交配し、神経系特異的cFLIP欠損マウスを作出した。腸上皮および肝細胞特異的cFLIP欠損マウスは生後2日で死亡するのに対し、神経系特異的cFLIP欠損マウスは1年以上生存し、脳組織の形態異常は観察されなかった。次に海馬錐体細胞、視床、網膜外顆粒層で多彩なタイプの細胞死を呈するカテプシンD欠損マウスにおけるCaspase Activated DNase(CAD)の役割を検討するため、カテプシンDとCADのダブルノックアウトマウスを作出し解析した。カテプシンD単独欠損マウスで典型的なアポトーシスを呈する網膜外顆粒層の細胞については、上記ダブルノックアウトマウスで、クロマチンの凝集が一部抑制され、DNAのラダーは観察されなかった。海馬錐体細胞では核の形態はカテプシンD単独欠損マウスと上記ダブルノックアウトマウスで変化は認められず、CAD非依存的に死に至る低酸素脳虚血障害モデルの海馬錐体細胞の細胞死における核の像と類似していたが、上記ダブルノックアウトマウスではDNAのラダー消失していた。このことから、カテプシンD欠損マウスにおける外顆粒層と海馬錐体細胞の細胞死における核の形態は異なるものの、DNAの断片化はともにCADに依存することが晟化となった。
3: やや遅れている
中枢神経系・網膜では、カテプシンD欠損マウスの外顆粒層の細胞のように、形態的に典型的なアポトーシスによる細胞死がある一方、低酸素脳虚血障害モデルにおける海馬錐体細胞の細胞死のように、形態的にアポトーシスでは説明できない細胞死の核の像を呈し、CADによらないDNAの分解が行われるものがある。カテプシンD欠損マウスの海馬錐体細胞の細胞死は上記の中間の特徴を有し、アポトーシスの観点だけでは説明することが困難である。そこで、ネクロプトーシスに着目し、ネクロプトーシスに必須なRipk3欠損マウスを入手し、低酸素脳虚血障害モデルの作成や、カテプシンDとのダブルノックアウトマウスの作出をすべく繁殖を進めているが、Ripk3欠損マウス、カテプシンD/Ripk3ダブルノックアウトマウスともに得られておらず、解析ができていない。
Ripk3欠損マウス、カテプシンD/Ripk3ダブルノックアウトマウスとも、ヘテロマウス、ダブルヘテロマウスの繁殖まで進んでいるため、目的のマウスが得られ次第、低酸素脳虚血障害モデルにおける神経細胞死、ダブルノックアウトマウスにおける網膜、海馬錐体細胞、視床の細胞死の検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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