(1) cbb3型酵素アイソフォームの機能と緑膿菌の表現型との相関 緑膿菌は好気呼吸において酸素を水に還元する末端酸化酵素を複数持っているが、酸素に対する親和性の高いcbb3型シトクロムc酸化酵素を酸素濃度に依らず主要な酵素として利用するという特徴がある。緑膿菌はゲノム上にコードされている複数のイソサブユニットの組み合わせにより16種類のcbb3型酵素アイソフォームを生産することができ、これらのアイソフォームは主要サブユニットの種類により4タイプ(N1~N4型)に分類できる。このうち、N3型酵素とN4型酵素は、それぞれ亜硝酸イオンおよびシアン化物イオンにより誘導発現する。N3型またはN4型酵素の欠損株、および、それぞれの酵素を唯一の末端酸化酵素として発現する菌株の表現型解析、または、酵素活性の解析を行った結果、N3型およびN4型酵素は、緑膿菌の低酸素環境における窒素酸化物とシアンに対する耐性に、それぞれ寄与していることが明らかとなった。 (2) cco遺伝子群の発現制御解析 N4型cbb3酸化酵素の主要サブユニットccoN4は、シアン化物イオンに応答して誘導発現し、その発現にはGntRファミリーに属するCicRと名付けた転写調節因子が関わる。大腸菌で異種発現、精製したCicRを用いた機能解析の結果、CicRはピリドキサルリン酸(PLP)を補因子として持ち、PLPとシアン化物イオンがシアノヒドリンを形成することで、シアン化物イオンを感知することが示唆された。また、ゲルシフト解析により、CicRはccoN4遺伝子のプロモーター領域に特異的に結合するのに対し、高酸素条件でのシアン耐性呼吸に関わるCyanide insensitive oxidaseの発現制御には直接関与しないことが明らかになった。
|