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2015 年度 実績報告書

活性酸素種による翻訳後修飾を検出する蛍光バイオセンサー

公募研究

研究領域酸素を基軸とする生命の新たな統合的理解
研究課題/領域番号 15H01402
研究機関京都大学

研究代表者

森井 孝  京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90222348)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード一酸化窒素センサー / 蛍光性バイオセンサー / 蛍光タンパク質 / GFP / S-ニトロシル化
研究実績の概要

生体内で産出される一酸化窒素(NO)は、様々なタンパク質に存在するチオール基を翻訳後修飾(S-ニトロシル化)することにより、シグナル伝達に関与していると考えられている。翻訳後修飾によるタンパク質機能の変化は多岐にわたっているため、NOが関与する細胞内シグナル伝達には、いまだ解明されていないことが多い。それらを解明していくためには、NOを直接生体内で観測する手法が必要である。
これまでに生体内のNOを検出するいくつかの方法が報告されている。その中でもNOとの特異的な化学反応を介した蛍光特性変化を利用した蛍光センサーは、非侵襲的な可視化を可能とするため、非常に有用である。蛍光有機小分子を基本骨格としたNOセンサーに関しては、いくつかの報告例がある。一方で、遺伝子として細胞に導入することで、細胞内で直接構築することができる蛍光タンパク質を基本骨格としたNOセンサーは、これまでに報告されていない。本研究では、蛍光タンパク質を基本骨格とした遺伝子導入型のNOセンサーの構築を目指した。
ROSによる翻訳後修飾を可逆的に検出する蛍光バイオセンサーの作製
スルフェニル基(SOH)やS-ニトロソ基(SNO)などの翻訳後修飾を受けることが既に知られているシステイン側鎖を有する内在性タンパク質(センサータンパク質)の部分構造を「ROS反応部位」として利用した「翻訳後修飾に伴う構造変化を読み出す細胞内発現型蛍光センサー」を蛍光タンパク質にROS反応部位を融合させて作製した。
構築したGFP融合タンパク質のうち、NOとの反応によって蛍光発光挙動が変化するものが得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

TRPチャネルのひとつであるTRPC5 (Nat. Chem. Biol., 2006)の構造変化メカニズムに着目し、そのS-ニトロシル化部位として同定されたCys553を含む部分構造を「ROS反応部位」として用いた。TRPC5から選定したROS反応部位を分割GFP (spGFP : Baird, G. S.; Zacharias, D. A.; Tsien, R. Y. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 1999, 96, 11241) の発色団付近に融合させた。発色団付近にROS反応部位を導入できるspGFPを用いるため、ROS反応部位の構造変化に鋭敏に応答して蛍光が大きく変化すると期待した。NOによりTRPC5のCys553のチオール基がS-ニトロソ基となった後にCys558とジスルフィド結合を形成することで引き起こされる一連の構造変化が、spGFPの発色団近傍の構造を変化させ、その結果、NOによる翻訳後修飾に依存したspGFPの蛍光変化が観測できると考えた。分割型および円順列変異型の二種類のGFPの蛍光団付近にNO応答部位を導入したNOセンサーを構築し、その機能を評価したところ、構築したGFP融合タンパク質のうち、NOとの反応によって蛍光発光挙動が変化するものが得られた。この結果は、当初の分子設計指針が有効であることを支持している。加えて、当初の設計通り、レシオ型センサーとして機能することも明らかになった。

今後の研究の推進方策

分割型および円順列変異型の二種類のGFPの蛍光団付近にNO応答部位を導入したNOセンサーが機能することが明らかになった。今後は、得られたセンサーをもとにして、一酸化窒素への選択性を評価する。また、レシオ型センサーとして機能することが明らかになったが、さらなる感度の向上(SN比の向上)を目指して、GFPとNO反応部位の連結部分について、様々な誘導体を合成する。NO選択的なセンサーが得られれば、細胞内でのセンシングを検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 蛍光タンパク質を基本骨格とする一酸化窒素センサー2016

    • 著者名/発表者名
      田嶋竣介・中田栄司・才村正幸・森井孝
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学(京都府・京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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