研究実績の概要 |
シグナル分子としての活性酸素種(ROS)や一酸化窒素(NO)の作用により誘起されるタンパク質の翻訳後修飾過程を、蛍光変化により可逆的に計測するバイオセンサーを構築し、細胞内でのROS、NOの時間的・空間的な制御過程をリアルタイムに計測することを目的として、研究を遂行した。ROSにより翻訳後修飾を受ける内在性タンパク質の部分構造をROS反応部位として用いて、分割蛍光タンパク質によるバイオセンサー構築法を応用した、標的タンパク質の翻訳後修飾を引き起こす活性酸素種を検出する細胞内発現型蛍光性センサーを構築した。 TRPC5チャネルの部分構造を導入した蛍光タンパク質誘導体2種類を設計、構築したプラスミド遺伝子を導入して形質転換した大腸菌を調製し、それぞれの蛍光タンパク質誘導体を大量発現した。大腸菌を破砕し、単離精製した蛍光タンパク質誘導体のうち、分割型が顕著にNOに応答し、蛍光強度変化を示すのが確認された。また、NO検出の逆過程を還元剤の添加によるジスルフィド結合の開裂で評価したところ、NOの応答とは逆の蛍光強度変化が確認されたが、設計した分割型蛍光タンパク質は、NOを検出可能なバイオセンサーとして機能した。次に、分割型バイオセンサーが設計どおりの機構でNOを検出しているかを明らかにするために、NO添加前後でのチオール基濃度を定量した。正確にチオール基を定量するために、EGFP中のシステインを別のアミノ酸に置換した変異体を作製した。その結果、C49S, C71Vの変異体が蛍光性を維持した状態で発現できた。この変異体を基本骨格として用いて作製したセンサーでも、同様にNOに応答した蛍光強度変化が確認された。検出メカニズムを明らかにし、他の活性種との選択性も評価しつつ、検出感度および応答速度を向上させた変異体の調製をおこなうことにより、細胞内でのNOセンサーの創製が期待出来る。
|