公募研究
本研究課題においては,神経科学研究のツールとしての霊長類に対する遺伝子導入法の改善,および神経回路機能シフトの1つの典型的な現象と考えられる盲視(blindsight: 大脳皮質第一次視覚野の損傷後に,視覚的な気付きvisual awarenessが失われるにもかかわらず視覚対象に対して視線を向けるような視覚運動変換を行うことができるという現象)の神経回路について明らかにすることを目的として研究を行った。具体的には当初はウイルスベクターを用いた遺伝子導入法の中でも光遺伝学的な手法を用いて盲視の神経経路と考えられている中脳上丘に関連する経路の機能について明らかにすることを目指した。しかし実験に用いるサルの負傷などもあり計画通りに研究を進めることが困難になったため,同じくウイルスベクターを用いた神経経路選択的な遮断法(順行性ベクターとしてアデノ随伴ウイルスを用い,逆行性ベクターとして高頻度逆行性ウイルスベクターを用いて,特定の神経経路に選択的に破傷風毒素遺伝子を発現させることで,経路選択的に神経伝達を遮断する手法)を用いて,片側の一次視覚野を損傷した盲視モデルのマカクザルの上丘から視床枕への神経伝達を遮断し,その前後で視覚刺激に対する急速眼球運動(サッケード)の成績変化について調べた。その結果,上丘-視床枕経路の選択的遮断によりサッケードの成績低下を認めた。このことから盲視における第一次視覚野を介さない代償的な視覚情報処理の少なくとも一部はこの上丘-視床枕経路が担っていると考えられる。この成果については現在論文投稿の準備中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114 ページ: 604-609
10.1073/pnas.1610787114