研究実績の概要 |
前年度の研究を発展させ、軸索刈込みにカスパーゼが機能しているという仮説を検証した。カスパーゼ3のドミナント・ネガティブ変異体遺伝子(C3DN)を中脳Edinger-Westphal核ニューロンに導入し、軸索において過剰発現した時の軸索分枝パターンをコントロールと比較した。その結果、6日胚(E6)のC3DN群において、分枝が減少し、分枝長が増大していることを見出した。すなわち、標的投射過程の軸索においては、分子数の増加と分枝長のホメオスターシスがあり、分子数の増大と分枝長の減少で特徴づけられるpathfinding modeと、分子数の減少と分枝長の増大をともなうtargeting modeの動的平衡状態にあること、およびカスパーゼ3の活性化により、targeting modeに傾くことが示唆された(Katow et al., Dev. Growth Diff, 2017, in press)。原核生物由来のNa+ポンプ型ロドプシンは、光遺伝学分子ツールとして、Cl-やH+などのイオン環境の影響を受けないとともに影響しないメリットがある(Kato et al., Nature, 2015)。しかし、膜発現効率が低い欠点があった。本研究においては、2種類のNa+ポンプ型ロドプシンをもとに、膜発現効率において改善された光遺伝学分子ツールを作製した(Hoque et al., PLoS ONE, 2016)。Cre-loxPシステムによりコンディショナルに明るい赤色蛍光タンパク質のtdTomatoを発現するレポーターラットを報告した(Igarashi et al., PLoS ONE, 2016)。In vivoニューロンにおいては、tdTomatoの極めて明るい蛍光が得られ、突起の形態や軸索の投射の解析に最適化されていた。以上の研究により、本新学術領域研究の促進に貢献した。
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