研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
15H01415
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柳川 右千夫 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90202366)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抑制性ニューロン / GABAニューロン / グリシンニューロン / 遺伝子改変マウス / アデノ随伴ウイルス |
研究実績の概要 |
脳は興奮性と抑制性のニューロンから構成されるネットワークの集まりからできている。抑制性ニューロンはGABAニューロンとグリシンニューロンに大別される一方、様々な機能プローブや蛍光タンパク質が開発され、神経回路研究に利用されている。しかし、特定のニューロンに限定して機能プローブを十分量発現させたり、発現のON/OFFを制御することは容易でない。そこで本研究では、テトラサイクリン発現誘導システムを利用し、遺伝子改変マウスとウイルスベクターとを組み合わせ、抑制性ニューロン全体、GABAニューロン及びグリシンニューロン選択的に機能プローブや蛍光タンパク質が発現するシステムの構築を目指している。 GABAニューロン特異的にテトラサイクリントランスアクチベーター(tTA)が発現するGAD67-tTAノックインマウス大脳皮質にテトラサイクリン応答因子を含むプロモーターの下流にGFP遺伝子を配置したアデノ随伴ウイルス(AAVウイルス)を注入し、3週後にGFPの発現を検討した。GABAニューロンの分布に類似したGFP陽性細胞の発現分布を観察した。さらに、GAD67-tTAノックインマウスおよび野生型マウス(コントロール)の小脳皮質にAAVウイルスを注入し、1週後と3週後にGFPの発現を検討した。その結果、1週後のGAD67-tTAノックインマウスにおいても強いGFPの発現が観察され、野生型マウスではGFPの発現が検出されないことから、ウイルス注入後1週間で十分量の遺伝子発現が可能であると考えられた。グリシンニューロン特異的にtTAが発現する遺伝子改変マウスを作製するためにGLYT2-tTAターゲッティングベクターを作成し、ES細胞に導入した。スクリーニングにより、相同組換えがおきたES細胞を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テトラサイクリン発現誘導システムを利用し、遺伝子改変マウスとウイルスベクターとを組み合わせ、GABAニューロン特異的遺伝子発現システムを構築できる見通しが立った。また、大脳皮質や小脳皮質の異なる脳領域でGFPの発現を十分量誘導できることから脳の領域特異的に発現制御できるシステムであることが確認できた。グリシンニューロン特異的遺伝子発現システムについても遺伝子改変マウス作製に向けて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
テトラサイクリン発現誘導システムでは、発現のON/OFFを制御できる可能性がある。そこで、AAVウイルスを注入した遺伝子改変マウスにドキシサイクリンを含む餌を与えることにより、遺伝子発現のON/OFFの制御について検討する。一方、グリシンニューロン特異的遺伝子発現システムに必要なGLYT2-tTAノックインマウスの作製を完成させる。GLYT2-tTAノックインマウスにAAVウイルスの注入実験を行い検討する。
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