研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
15H01422
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
一瀬 宏 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (90192492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドーパミン / 大脳基底核 / チロシン水酸化酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、大脳基底核の神経回路が発達に伴いどのように変化シフトしていくかを明らかにすることを目的としている。今年度の研究では、AADC-KIマウス、TH過剰発現マウス、Spr-KOマウスなどモノアミン代謝を擾乱したマウスを用いて脳内ドーパミン量の発達に伴う調節機構の変化、さらに、運動機能異常の発症機構を解析した。 AADC活性が野生型の1%以下に低下しているAADC-KIマウスで、なぜ脳内ドーパミンが3-4週齢以降に増加してくるかを明らかにするために、1) AADCを介さない別経路によりドーパミンが生成される可能性、2) AADC以外の酵素がドーパミン前駆体であるDOPAを脱炭酸してドーパミンを合成する可能性についてin vitro反応系を用いて生化学的に検討した。その結果、上記1および2の可能性は否定できることを示した。 また、我々のこれまでの解析から野生型マウスの黒質-線条体系ドーパミンニューロンでTHを過剰発現させても脳内ドーパミンニューロン量が増加しないことが明らかとなっていた。この分子メカニズムの一つとして、生成物であるドーパミンによるフィードバック阻害が起きている可能性が考えられた。そのため、今年度の研究としてドーパミンが結合しないリン酸化型THを模倣するTH変異体を作製し、そのTH変異体を再びマウス脳内に投与して野生型と同様の実験を行った。その結果、TH変異体の発現でも脳内ドーパミン量が増加しないことから、脳内ドーパミン量が増加しない原因はTHの活性調節機構ではなく、それ以外のドーパミン代謝の変化による可能性が高いことを明らかとした。 さらに、ビオプテリン欠乏によりパーキンソン病様の運動障害を来すSpr-KOマウスについても、大脳基底核における神経活動の変化をユニット記録の手法により解析を行い、他のパーキンソン病モデル動物と同様の変化を示すことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、初年度の研究計画として掲げた3つの項目について、ほぼ予定通り実験を遂行し成果を挙げることができたので、おおむね順調に計画を達成させることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、大脳基底核の直接路と間接路という神経回路がどのように発達に伴ってシフトしていくかの分子機構を明らかとするために、THの過剰発現を成獣ばかりではなく、新生仔マウスにおいても実施して、発達時期によりドーパミン量調節機構が異なる可能性についても検証していく。さらに、生化学的手法ばかりでなく、組織化学・電気生理学的な手法も積極的に導入していくことにより、多面的にアプローチしていくことにより神経回路シフトの新しい分子メカニズムの発見に努める。
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