恐怖条件付けしたマウスにおいて、恐怖と連合したキューや文脈の提示において視床下部外側野に局在するオレキシン産生ニューロンが興奮させ、OX1Rを介して青斑核のノルアドレナリンニューロンおよび扁桃体外側核を興奮させることを各種ウィルスベクターをもちいて構造的に示した。この系を光遺伝学的、あるいは化学遺伝学的に抑制すると、恐怖条件下におけるすくみ行動が明確に減弱することを明らかにした。このことから、オレキシンとOX1R受容体が恐怖条件における行動の制御に関わっていることが明らかになった。さらに、オレキシン産生ニューロンにチャネルロドプシン2を発現させ、青斑核において神経線維を光刺激することにより、恐怖条件付けに用いた文脈と異なる文脈においてすくみ行動を発現させることが明らかになった。青斑核のノルアドレナリンニューロンの軸索を扁桃体外側において刺激しても同様の現象が認められた。これらは、恐怖条件付けを行っていないナイーブなマウスにおいては見られなかった。これらのことから、オレキシン→青斑核→扁桃体外側の経路が恐怖行動の制御をおこなっており、この系の過剰興奮は、恐怖の般化などに見られる不適切な恐怖応答に関与していることが示唆された。
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