公募研究
本年度は、大脳皮質の特定の領野における特定の層に由来するフィードバック結合を特異的に標識するためにウイルスベクターの開発を行った。フィードバック結合を標識する目的で、前年度ではイヌアデノウイルスCAV-2を用いて逆行性に遺伝子導入を行っていた。しかし、CAV-2は解剖学的な解析には使用できるが、ウイルスによる毒性が認められ、神経活動の記録や操作と組み合わせた生理学的な実験には適さないことが判明した。そこで、生理学的実験および行動解析にも適用可能な、毒性のない、あるいは極めて低毒性の逆行性感染ウイルスを探索した。1. 逆行性感染を起こすことが報告されたAAV2-retroをカプシドに持つアデノ随伴ウイルスベクター。2. 狂犬病ウイルスの糖タンパク質と水泡性口内炎ウイルスの糖タンパク質とのキメラ糖タンパク質をさらに最適化した糖タンパク質をエンベロープを持つHIVウイルスベクター。3. 自己複製能を欠損したG欠損型狂犬病ウイルスベクターの3つのウイルスを作製し、各々の感染効率および毒性を解析した。AAV2-retroでは、逆行性感染が認められるが、ウイルスが注入領域から拡散し、小さい領野や神経核にのみ遺伝子導入を限局させることが難しかった。最適化キメラ糖タンパク質をエンベロープに持つHIVウイルスベクターでも同様に逆行性感染が認められ、ウイルス感染を局所にとどめることもできたが、ウイルスのタイターを上げるのが難しく、導入遺伝子の性質やサイズなどのコンストラクトの違いにより、バラツキが認められた。最後に、逆行性感染効率が最も高いのはG欠損型狂犬病ウイルスベクターであったが、感染初期では電気生理やイメージングなどの生理学実験に使用できるものの、感染後期には毒性が認められることが明らかになった。そこで、G欠損型狂犬病ウイルスベクターの毒性を軽減する目的で、ウイルス構成因子に変異を導入したところ、ウイルスの低毒化に成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 図書 (1件)
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