研究実績の概要 |
中枢神経系は認知・思考・記憶・感情といった高次機能を実現しているが、その作動原理は未だ謎のままである。高次機能を実現する素子・構成単位として、神経細胞を想定することは妥当であろう。しかし神経細胞一つ当たりの情報処理速度は高々1KHz程度が限界であり、神経細胞が構成するネットワークにこそ、高次機能を生み出す原理があると考えられる。 平成27年度は以下の課題に取り組んだ。 (1) 細胞種特異的かつ高発現型ウイルスベクターの開発 レンチウイルスベクターにTet-Offシステムを利用することで、目的遺伝子の発現量を40倍程度まで増強することに成功し、またin vivoウイルス二重感染法の基礎を築いた(Hioki et al., 2007, 2009)。さらにAAVにもTet-Offシステムを搭載し、効率的な遺伝子導入システムの構築に成功した(Sohn et al., in preparation)。今後はTet-Onシステムの構築、および新規蛍光プローブのスクリーニングを進める。 (2) ハイスループット形態解析法 脳透明化技術を有効に利用すれば、三次元情報が容易に取得できるようになる。時間や労力の大幅な削減(量的変化)が、従来見えなかったものを見るという質的変化をもたらすと期待される。共同研究を通じ、新しい透明化技術「ScaleS」の開発に成功した(Hama, Hioki et al., 2015)。透明度の飛躍的向上・膨張率の改善・時間の短縮に成功している。また微細構造が保存されることから、電子顕微鏡による観察も可能であり、マクロからミクロに至る多階層構造情報を束ねる有効的な手法だと考えられる。引き続き、透明化脳に特化した技術を基礎から開発・検証していく。
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