本研究では、中枢随意運動回路の可塑性を制御する機構を明らかにすることを目的とする。これまでの研究で、中枢神経損傷後に、運動機能を制御する皮質脊髄路が、損傷を免れた軸索から頚髄のレベルで側枝を形成し、interneuronsに新たな回路を形成することを明らかにした。さらに運動神経回路の再編成現象を明確に評価するin vivoのシステムを確立し、神経回路の可塑性制御に関わる分子を同定した。本研究では、まず脳障害後の神経回路修復モデルを用いて、随意運動神経回路の可塑性を制御する上位の神経回路のメカニズムの解明を行う。本年度においては、薬剤を用いた実験によって、dopaminergic meso-cortical projectionによるシグナルが皮質脊髄路の可塑性制御に必要であることを示すデータを得た。またdopaminergic meso-cortical projectionが皮質脊髄路ニューロンにシナプスを形成することで、運動野ニューロンの皮質下での可塑性を生み出すことを明らかにした。さらにこの回路の機能を抑制すると、脳挫傷後の運動機能回復が遅延することを見いだした。In vivoにおいて随意運動回路を制御する分子機構を明らかにすることで、成体における神経回路再編成のメカニズムを解明することを到達目標として研究を進めた。皮質脊髄路の可塑性を誘導するメカニズムを強めることで、運動機能障害を効果的に改善させる分子標的を見いだすことを最終目標とする。
|