脳血管障害後の有効なリハビリ法に、麻痺側上肢を集中的に使用させるCIMT療法がある。CIMTによる早期からの上肢機能の回復が、皮質赤核路の促通性亢進による直接的作用によるのか?他の神経回路を介する間接的作用によるのか?について、解析を進めた。具体的には、脳出血前に予め二重ウイルスベクター感染法により赤核へレンチウイルスを運動野へアデノ随伴ウイルスを感染させ、CIMT後に皮質赤核路をドキシサイクリン(DOX)投与で選択神経遮断する時期を可変化させ、上肢機能を評価した。一方、赤核における促通性亢進関連因子の探索も行った。 これまでに、脳出血作成前にレンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを感染させ、1. CIMT開始期(出血1日後)からのDOX投与による持続的な神経遮断、2. CIMT終了5日後(出血13日後)からの皮質赤核路の神経遮断、を実施し、上肢運動機能の評価を行った。その結果、CIMT開始期から皮質赤核路を選択遮断した場合には、出血1~8日後の1週間のCIMTにより上肢機能の改善が観察された。このとき、皮質赤核路の神経投射の増加は認められないのに対し皮質網様体路の網様体部への神経投射が多く認められることが明らかになってきた。一方、CIMT終了5日後の出血13日後からの7日間を神経遮断した場合には、遮断直前(出血12日後)に確認されたCIMTによる上肢機能改善がDOX投与により完全に消失した。すなわち、出血後早期のCIMTにより皮質赤核路が早期からの機能回復に重要であることが明確になった。また同時に、早期CIMT中の皮質赤核路の神経遮断は、皮質網様体路を含む他の神経回路による機能回復メカニズムを誘引することも示唆される。 一方、赤核の促通性亢進関連因子の探索は、脳出血後のCIMTで発現増加する成長関連因子などを網羅的に調べ、いくつかの候補遺伝子を明らかにした。
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