研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
15H01452
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
船水 章大 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (20724397)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 皮質 / 二光子顕微鏡 / 行動戦略 / 光遺伝学 / カルシウムイメージング / 頭頂葉 / 脳科学 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
行動戦略スイッチの神経基盤を調べるために,まず,頭頂皮質 (posterior parietal cortex: PPC) が,行動戦略遂行に寄与するかを調べた.この実験では,音源定位課題中のマウスで,GABA-A受容体作動薬のムシモールをPPCに注入し,PPCの神経活動を抑制した.なお,音源定位課題で,マウスは,音源に到達すると報酬の水を得た.同課題は,音刺激を連続的に提示する連続音条件と,断続的に提示する断続音条件を持つ. 音源定位課題中のマウスの行動を計測した結果,断続音条件の無音区間でも,報酬を予期するリック行動 (水のポートを舐める行動) を増加させた.一方,ムシモールを注入したマウスでは,連続音条件のリック行動は変化しなかったが,断続音条件の無音区間でのリック行動が減少した.この結果は,PPCは,自らの行動 (行動依存の状態遷移モデル) を用いた距離推定に寄与することを示唆する. 本研究は,二次運動野 (secondary motor cortex: M2) からPPCへの神経回路が,状態遷移モデルに基づく行動戦略に寄与すると仮定する.今後,同回路を光遺伝学手法で選択的に抑制する.今年度は,光遺伝学実験を実施するために,蛍光顕微鏡用光源を購入し,セットアップを行った. 本研究は,行動戦略依存的な神経回路変化を調べるために,PPC, M2を含んだ複数脳領野での大規模神経活動計測をめざす.そのために,マクロ蛍光顕微鏡システム・SCMOSカメラ・蛍光顕微鏡用光源を購入した.これらの機器では,蛍光カルシウムプローブのGCamp6fと組み合わせることで,複数脳領野の神経活動をマクロイメージングできる.なお,これらの機器で,今年度は,脳スライスでの蛍光観測を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後頭頂皮質 (PPC) の神経活動をムシモールで抑制した結果,状態遷移モデルを用いた行動戦略を阻害できた.同結果と,これまでの研究成果を合わせて,国内外の学会で発表した.また,国際的な学術雑誌に論文を投稿中である. 蛍光顕微鏡用光源を用いた光遺伝学実験のセットアップは完了した. マクロ蛍光顕微鏡システム・SCMOSカメラ・蛍光顕微鏡用光源を購入した.これらの機器では,脳スライスでの蛍光観測はできた.しかし,課題中のマウス皮質の複数領野同時計測のセットアップは完了していない.
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今後の研究の推進方策 |
ArchTを発現したアデノ随伴ウイルスを,二次運動野 (M2) に打ち込む.M2から頭頂皮質 (PPC) に投射する神経細胞の軸索を,PPCで光刺激し,PPCへの投射細胞を選択的に抑制する.同抑制時に,音源定位課題中のマウスの行動変化を調べる.なお,PPCにArchTを打ち込み,PPCを直接光刺激した際の行動変化も調べる.これらの光刺激では,今年度に購入した蛍光顕微鏡用光源を用いる. マクロ蛍光顕微鏡システム・SCMOSカメラのセットアップを完了し,M2やPPCを含む複数領野の大規模神経活動計測を実施する.この実験では,GCaMP6fを発現したアデノ随伴ウイルスを用いる.また,二光子顕微鏡では,GCaMP6f を用いて,M2からPPCに投射する神経細胞の軸索の神経活動を,PPCで計測する. 得られる成果を,国内外の学会で発表する.また,国際的な学術雑誌に成果を投稿する.
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