公募研究
生物は、異なった文脈においても同じ行動を発現すべき時には同一運動を発現するが、大脳皮質局所回路(一次運動野、M1)の活動が異なった入力に対してどのように遷移してひとつの安定した出力を実現するかは不明である。平成27年度は、頭部固定マウスが内発性(自発的)におよび外発性(音刺激誘導性)にレバーを引くオペラント課題を実行中に、3次元2光子カルシウムイメージングをM1で行う系を確立した。カルシウム感受性蛍光タンパク質のひとつ、R-CaMPの遺伝子をコードするAAVをマウスM1に導入し、その後2週間経ってタンパク質発現量が十分高くなってから、頭部固定下で右前肢レバー引き運動を内発性に(好きな時に)、または外発性に(音が鳴って200ミリ秒以内にレバーを引くと水がもらえる)行うことを約10日間学習させた。内発性レバー引きと音誘発性レバー引きを1セッション内で入れ替えてもマウスが両条件に速やかに反応できるようになった。またレバー軌道だけではなく、同時に前肢の動きや舌運動も高速CCDカメラを用いて計測可能とし、内発性、外発性課題でレバーだけでなく、舌運動などの動きも同一であることを確認できた。課題実行中に2光子カルシウムイメージングをM1において3次元的に行い、2層から5b層までの細胞活動のデータを取得することが出来た。その結果、内発性選択的に、または音刺激選択的に活動を示す細胞があること、両条件で同様に活動する細胞があることがわかってきた。現在、その比率が層によって異なるかを解析している。
2: おおむね順調に進展している
1セッション内で5分毎に内発性と外発性課題を入れ替えてもマウスが安定して課題を実行できるようになり、さらに課題実行中に2光子カルシウムイメージングをM1において3次元的に安定的に行い、SN比の高い課題関連活動が検出することに成功したことから、実験系が高い水準で確立できたと判断したため。
これまでに得られたデータから選択性指標を計算し、それぞれに選択性をもつ細胞が層ごとにどのように異なった分布をしているのかを定量的に明らかにした後、それぞれの課題で選択性が見られた層に注目し、そこに入力する領野を順行性蛍光トレーサーなどを用いて解剖学的に確認する。その層に入力している領野を決定したのち、次に入力領野にAAV-GCaMPを導入する。そしてマウスの課題実行中にその軸索活動をM1入力層において2光子カルシウムイメージングを行う。その軸索活動の内発性と外発性課題における選択性が、M1層活動の選択性と一致するかどうかを検証する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件)
Journal of Neuroscience
巻: 35 ページ: 13311-13322
10.1523/JNEUROSCI.2731-15.2015.
Cell Reports
巻: 13 ページ: 1989-1999
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