公募研究
lncRNAが発生や幹細胞性の維持、癌化のような重要な生命現象に関わっていることが明らかとなってきた。我々は、新規lncRNAであるUPATが、エピゲノム制御因子UHRF1と結合することによって大腸癌の腫瘍形成能を維持していることを見出した。また、UHRF1がヒストン修飾酵素と結合すること、Wnt経路によってUHRF1の発現が制御していることを見出した。本課題では、UPAT-UHRF1によるエピゲノム制御機構を明らかにし、UPAT-UHRF1がもたらす大腸癌形成能維持の分子機構及び生理的意義の解明を進め、新しいlncRNA-タンパク質ワールドを紐解くことを目的として研究を進めてきた。現在までに、大腸癌細胞においてUHRF1の発現を制御しているwnt pathway下にある転写因子の同定に成功し、またUHRF1依存的な細胞増殖に関与するターゲット遺伝子群の同定に成功した。さらに、新規のUHRF1結合タンパク質であるヒストン修飾酵素の機能をUHRF1が負に制御することによって、ヒストン修飾を制御していることを明らかにした。また、新規に得られたUHRF1ターゲット遺伝子は、同ヒストン修飾酵素によって転写制御を受けることも明らかにした。現在までに明らかとなったUHRF1を中心とした3層の事象を統合し、新たな大腸癌の腫瘍形成能維持機構の解明を目指し、今後はUHRF1による詳細なヒストン制御機構及び同機構へのUPATの関与を明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
UHRF1による遺伝子発現プロファイル及びRNAiスクリーニングを組み合わせることによって、癌抑制に関わるTUSC3がUHRF1によって発現抑制され、細胞増殖を制御していることを明らかにした。先行研究により、UHRF1がKAT7と結合することが明らかとなっている。KAT7はH3K14, H4K5, H4K8, H4K12のアセチル化を介して転写を制御し、組織ごとに細胞増殖を制御することが知られているが、大腸癌における機能については未だ報告がない。そこで、大腸癌におけるUPAT-UHRF1のヒストンアセチル化及びKAT7との関わりを調べた。UHRF1の発現抑制によって引き起こされる増殖抑制を、KAT7の発現抑制によってレスキューされることが明らかとなり、UHRF1は、KAT7の機能を阻害していることが示唆された。さらに、UHRF1によるTUSC3の発現制御機構にKAT7が関与していることを明らかにした。続いてKAT7は、大腸癌においてH3K14のアセチル化のみを制御することを明らかにした。さらに、UHRF1がH3K14のアセチル化を負に制御していることを明らかにした。
UHRF1によるKAT7の機能阻害がどのように引き起こされているのかを明らかにする。まず、UHRF1とKAT7が細胞内のどこで結合しているのか、お互いの結合領域を確認し、その結合及び結合局在に対してUPATがどのように関与しているかを確認する。続いて、KAT7抗体を用いたChIP-seq解析を行い、UPAT-UHRF1によるKAT7の挙動変化を調べ、TUSC3や他のUHRF1ターゲット遺伝子の発現制御機構にKAT7が直接関与しているかを明らかにする。さらに、UHRF1がKAT7のユビキチン化及び安定化に寄与しているかを確認する。また、H3K14のアセチル化修飾に対する抗体を用いてChIP-seq解析を行い、ゲノムワイドなUPAT-UHRF1が制御するH3K14アセチル化を確認する。さらに、H3K14アセチル化とH3K9メチル化など他のヒストンコードとの関わりに、UPAT-UHRF1がどのように関与しているかを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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