公募研究
近年,X染色体の不活性化機構に重要なXistやゲノムインプリンティング制御に重要なLIT1, Airなどに代表されるノンコーディングRNA(ncRNA)が,染色体ドメインレベルに遺伝子発現を制御していることが明らかとなっている。 これまでの研究から,それらの作用機序は多岐にわたり,XistのようにcisにX染色体上に局在し,染色体全体を不活性化に導くものもあれば,LIT1のようにある特定の局所な染色体領域にG9aなどのヒストンメチル化酵素複合体をリクルートするものまで様々である。最近の生化学的解析から,PRC2複合体などのncRNAと会合するタンパク質の実態は徐々に明らかにされつつあるが,ncRNAが如何に特定の局所な染色体領域にのみ作用するかについては未だ明らかにされていない。申請者は,これまでの実験からncRNAの局所的な染色体領域へ作用には何らかの足場構造なるものが関与している可能性を考えている。そこで,本研究ではncRNA, IPWが遠位の染色体領域に作用するのに必要な足場クロマチンの構築機構と,それに作用するncRNA, IPWの配列を申請者独自のヒト染色体工学技術と昨今のゲノム編集技術CRISPR/Cas9システム,及びshRNAライブラリースクリーニングを駆使して明らかにしたいと考えた。当該年度は,足場クロマチンとなる15q11-q13領域のクロマチン脱凝集を規定する分子をshRNAライブラリーのスクリーニングによって同定することを試みた。また,約4,500bpに及ぶncRNA, IPW配列のどこに機能ドメイン(作動エレメント)が存在するのかを明らかにするため,CRISPR/Cas9システムを用いて様々な欠失タイプのIPWを作製し,MAGEL2, NDN遺伝子発現やその核内配置を指標に,IPWの作動エレメントの同定を試みた。
2: おおむね順調に進展している
予定していたshRNAライブラリーのスクリーニングによる15q11-q13領域のクロマチン脱凝集を規定する分子を同定と,CRISPR/Cas9システムを用いたIPW配列の作動エレメントの同定実験は順調に進んでいる。平成28年度に,作成した改変染色体を用いてMAGEL2, NDN遺伝子発現やその核内配置を指標に,IPWの作用機序を明らかにする。
平成28年度は,引き続き生化学的アプローチとゲノム編集技術を駆使して,クロマチン脱凝集を規定する分子とncRNA, IPWとの作用機序を明らかにする。平成27年度に同定したクロマチン脱凝集を規定する分子の機能解析を行う。具体的には,既知のRNA結合タンパク質でない場合,リコンビナントタンパク質を作製し,生化学的解析よりRNAと相互作用する機能ドメインを同定する。さらに,RNA結合能に対する一般則を見出すため,RNA-IP解析により,結合するncRNA(機能性RNA)を網羅的に同定する。また,15q11-q13領域の発現制御に関わる既知の分子,MeCP2, TopIIα,β,SATB1との相互作用をIPにより生化学的に解析するとともに,平成27年度に作製したそれらのノックアウト細胞株を用いて,ncRNA,IPWが足場クロマチンを介して遠位の染色体領域に作用する分子基盤を明らかにする。また,平成27年度に作成した様々なIPW欠失ヒトiPS細胞にて,14番染色体上のDLK1-Dio3領域への作用にも異常をきたすか明らかにする。さらに,東京大学に設置されている超解像度顕微鏡を用いた脱凝集したクロマチンとncRNA, IPWの会合挙動の解析する。具体的には,ncRNA, IPWの5’末端および3’末端配列をプローブにし,3D-SIM(3D structured illumination)技法を用いた超解像度イメージングシステムにて,足場クロマチン(作動装置)とIPWの作動エレメントとの相互作用を解析する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Frontiers in Psychiatry
巻: 7 ページ: -
10.3389/fpsyt.2016.00002
Plos Genetics
巻: 12 ページ: -
10.1371/journal.pgen.1005802
http://chromosome.w3.kanazawa-u.ac.jp/horike/index.html