研究実績の概要 |
Piwi-piRNAの核内での転写抑制機構解明に向けて、免疫沈降を用いた関連因子群の同定およびエピゲノム解析を行った。その結果、核内におけるPiwiタンパク質の新たな相互作用因子として、リンカーヒストンであるHistone H1を同定した。PiwiとH1は共通のトランスポゾンを抑制し、標的トランスポゾン領域におけるH1結合量はPiwiにより規定されることを見出した。加えて、本来Piwi-piRNA複合体の標的とならないゲノム領域に人工的にPiwi-piRNAをリクルートする手法を利用し、Piwi-piRNAのリクルートに伴いH1結合量が増加することを確認した。これまでに、Piwi-piRNA複合体はトランスポゾン領域の抑制性ヒストンマーク(H3K9me3)の形成に必須であることが明らかにされてきた [Sienski et al. Cell (2012)]。一方で、H1を介したPiwi標的トランスポゾンの抑制は、Piwiによる抑制性ヒストンマークの形成と並行して機能することを示した。さらに、Piwi-piRNA複合体がH1および抑制性ヒストンマークの制御を介してクロマチン構造を凝集させることが、Piwi-piRNA複合体によるエピジェネティックなトランスポゾン発現抑制の実態であることを明らかにした。これらの結果から、Piwi-piRNA複合体は抑制性ヒストンマークの形成に加え、リンカーヒストンの位置情報を規定することで、クロマチン構造を凝集させトランスポゾンの発現を抑制する、というPiwi-piRNA複合体による新たなエピゲノム制御モデルを提唱した。本研究成果はMolecular Cell誌に掲載され [Iwasaki et al., Mol Cell (2016)]、また招待講演等で研究発表を行った。
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