研究領域 | ノンコーディングRNAネオタクソノミ |
研究課題/領域番号 |
15H01477
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀 哲也 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70550078)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セントロメア / クロマチン / RNA |
研究実績の概要 |
kdRNAの転写の活性化にかかわる因子の探索、kdRNAを含む複合体の精製と構成因子の同定およびセントロメアクロマチン構築との関連性の解明を目指し、以下の3点を中心に研究を行った。 1. kdRNAの転写の活性化にかかわる因子の探索:約150bのkdRNAが出現する現象が同様に観察されたCCN人工動原体に集合する動原体タンパク質群をLacIタンパク質と融合させ、LacO-LacI システムにより染色体上に異所局在化を行い、kdRNA 転写に関与する因子の特定を試みたが、LacO領域由来の150bの核酸の誘導は確認されなかった。そのため、CCN人工動原体の誘導に直接関与するCENP-CのN末(1-643)、あるいはCCN人工動原体そのものが150bの核酸の出現に関与する可能性が示唆された。 2. kdRNAを含む複合体の精製と構成因子の同定:ニワトリDT40細胞で樹立したCENP-Sタンパク質遺伝子の条件的ノックアウト細胞を利用し、kdRNAの出現が亢進するタイミングで細胞の固定を行い、定法に従いニワトリのセントロメアDNA配列をプローブとしてRNA-FISH 法を行い、kdRNA の細胞内の局在性を解析した。その結果、セントロメア上に明瞭なシグナルは得られず、kdRNA がセントロメアから遊離する可能性が示唆された。 3. セントロメアクロマチン構築との関連性の解明: ニワトリDT40細胞で樹立したCENP-Sタンパク質遺伝子のノックアウト細胞を利用し、抗CENP-A抗体を用いたChIPseq解析を行い、セントロメアクロマチンのゲノム上の位置を特定し比較解析を行った。その結果、正常細胞と比べCENP-Sノックアウト細胞はセントロメアの位置が高頻度に動く現象を見いだし、kdRNAの出現との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度において、CCN人工動原体の誘導に直接関与するCENP-CのN末(1-643)、あるいはCCN人工動原体そのものが150bの核酸の出現に関与する可能性を示唆する結果を得た。しかしながら、計画していた共免疫沈降実験によるkdRNA出現に関与する複合体の精製と構成因子の同定には至っておらず、今後の課題である。また、RNA-FISH 解析からkdRNAがセントロメアから遊離する可能性を示唆する結果を得た。しかしながら、計画していたリボ核酸アナログによるkdRNA のBiotin 標識とプルダウン実験によるkdRNA複合体の精製と相互作用因子の同定には至っておらず、今後の課題である。一方で、CENP-S遺伝子のノックアウトにより高頻度にセントロメアの位置が動く興味深い現象を見いだした。この発見は、kdRNAのセントロメアクロマチン構築における役割解明に向けた重要な知見と言える。以上の理由により、やや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
共免疫沈降実験によるkdRNA出現に関与する複合体の精製と構成因子の同定を行う。さらに、リボ核酸アナログによるkdRNA のBiotin 標識とプルダウン実験によるkdRNA複合体の精製と相互作用因子の同定を行う。同定したkdRNA出現に関与する複合体およびkdRNA複合体形成に関与する因子について、ニワトリDT40細胞によるノックアウト細胞の作製、および異所局在等によりセントロメアを誘導する活性を有するか検証実験を行う。さらに、セントロメアクロマチンの位置が動く現象について、他のセントロメア関連遺伝子の変異体においても検証を行い、kdRNAとの関連性も含めたメカニズムの解明を目指す。これら研究を推進し得られた結果を踏まえて、動原体構築の障害で誘導されるkdRNAが持つ機能および生物学的意義について考察する。
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