がんの発生、および進展は、さまざまな遺伝子変異を有するサブクローンが競合し、最も増殖に適したクローンが選択される適者生存のプロセスから成り立つと考えられている。このようなプロセスをin vivoでモデル化し、がん化に寄与する遺伝子を網羅的に同定するために、本研究では、マウスにおけるトランスポゾン・ミュータジェネシス法を利用した。トランスポゾンを用いてゲノムにランダムに変異を導入し、形成した腫瘍におけるトランスポゾン挿入変異を解析することで、腫瘍形成に寄与した遺伝子を網羅的に同定できる。本研究では、申請者が開発した脳腫瘍のモデルマウスを用いることで、神経前駆細胞が脳腫瘍へと形質転換する過程に寄与する遺伝子の網羅的な探索を目指した。まず、Nestin-creマウスを変異原性トランスポゾンを有するマウスと交配し、脳腫瘍が形成することを確認した。次に、このモデルを用いて癌の悪性化に寄与する遺伝子の同定することを計画した。そのためには、さまざまな段階の病変を回収する必要がある。肉眼的に、初期病変や転移病変を同定することは困難であるため、腫瘍の起源細胞がGFPを発現する、Math1-GFPトランスジェニックマウスを組み合わせたところ、腫瘍をGFPで可視化することができた。GFPの蛍光を指標にして、初期病変と進行病変を回収した。これらの病変からゲノムを抽出し、4-base cutterを用いてゲノムを断片化した。アダプターをライゲーションし、トランスポゾン挿入部位の近傍のゲノム領域をPCRで増幅した。両端にバーコード配列が含まれたindexプライマーを用いることで、イルミナシーケンサーに対応させた。これらのPCR産物を精製して、次世代シークエンサーで解析した。解析結果を得ることができたため、今後、次世代シークエンサーのデータからドライバー遺伝子の同定に進むことができる。
|