公募研究
本研究は癌幹細胞の細胞競合作用の分子的基盤解析とその臨床応用への展開という二つの視点を特徴とする。飢餓状態における癌幹細胞の細胞競合優位性が示唆されているが、分子機序には不明な点が多い。本研究ではアミノ酸欠乏状態における細胞競合について解析した。まずゲノム編集レンチウイルスを構築し、癌抑制遺伝子Xをノックアウト(KO)したヒト肝癌細胞を作成した。X-KOヒト肝癌細胞は、通常環境下では細胞増殖は変化しないが、分岐鎖アミノ酸ロイシン欠乏状態において優位性を示し細胞増殖が維持されることを見出した。アミノ酸欠乏によってオートファジーが誘導され、オートファジーの選択的分解基質であるp62が低下するが、X-KOヒト肝癌細胞ではオートファジーが阻害されておりp62蛋白の蓄積を認めた。p62は酸化ストレスを低下させ、細胞死を抑制する機能を持つことが報告されている。X-KOヒト肝癌細胞ではロイシン欠乏状態でもオートファジー誘導が遅延し、p62が保持されて酸化ストレス抵抗性が亢進することが示された。さらにTET-ONシステムを用いてX発現誘導ヒト肝癌細胞を作成した。ドキソルビシン投与によりX発現を誘導すると、p62が漸減しin vitro細胞増殖の阻害およびin vivo腫瘍形成の抑制を認めた。また肝癌臨床検体を用いた解析では、X発現低下を半数以上に認め、p62発現との負の相関を検出した。X低下症例は、全生存率および無再発生存率の何れにおいても予後不良を呈し、多変量解析の結果 独立した予後不良規定因子であることを証明した。肝癌患者のほとんどは慢性肝障害を合併し、特に分岐鎖アミノ酸欠乏を認める。分岐鎖アミノ酸欠乏状態においてX低下肝癌は代謝競合を示すことが明らかとなり、競合的優位性による新たな癌進展メカニズムの存在を示した。アミノ酸代謝制御を用いた癌治療開発への応用が期待できる画期的成果である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Cancer Therapeutics
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