多細胞生物の発生過程や、前がん細胞の駆逐、そしてがん細胞よる正常細胞の排除過程など、生体の中の様々な場所で細胞間の競合が起きている事が知られている。この細胞競合という現象の発見・機構とその破綻によるがんの発生などは、主としてショウジョウバエをモデル動物として推進されてきた。しかし、哺乳類動物の体内でも細胞競合現象は起きており、生体の恒常性維持のために重要な働きをしていると考えられる。二次元平面の細胞培養系における細胞競合現象のさらなる理解にとって必要な解析技術は、細胞競合の現場に居合わせている細胞の状態の定量的可視化技術と、単一細胞レベルでの遺伝子発現動態操作法であると申請者は考えている。このような実験技術が確立できれば、二次元平面の細胞培養系における細胞競合現象の研究において、よりシステマティックな構成的アプローチが可能になり、勝者あるいは敗者となる細胞間の細胞状態の差異のコントラストや、細胞競合が引き起こされるための周辺環境についての必要あるいは十分条件について理解が進むと期待される。本年度は、デジタルミラーデバイスを用いて、二次元培養した細胞の狙ったシングルセルを光照射する実験系の確立を行った。
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