研究領域 | 細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム |
研究課題/領域番号 |
15H01492
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊田 順一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60710069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体イメージング / 細胞競合 |
研究実績の概要 |
近年、上皮由来がんの発生初期において、変異細胞がその周囲を正常上皮細胞に囲まれた状態で存在し、両者が生存を争う細胞競合現象が生じていることが明らかとなってきた。本研究は、蛍光生体イメージング技術を活用して、哺乳類の生体内で生じる細胞競合現象を観察する新規の生体イメージング系を確立し、細胞競合により変異細胞が正常上皮層より排除される様子を可視化する。さらに、細胞競合を行う正常上皮細胞と変異細胞を顕微鏡下で選別して抽出し、細胞競合の際に起こる多彩な遺伝子発現変化を個々の細胞レベルで定量的に解析する新たな方法論を構築することで、従来の研究手法では明らかにできなかった細胞競合に重要な分子やシグナルを同定し、細胞競合制御機構を統合的に解明する。 平成27年度はまず、マウスを生かしたまま長時間生理的な環境を維持しながら生体腸管組織を観察する新規の生体イメージング系を確立した。さらに、確立した生体イメージング技術を用いて、細胞競合モデルマウス(Villin-CreERT2;LSL-RasV12-IRES-EGFP)の生体腸管組織を観察し、哺乳類における細胞競合現象を経時的に可視化することに成功した。平成28年度は、これらの成果をもとに、細胞競合により変異細胞がどのようにして正常上皮層より排除されるのか時空間的に解析を行うとともに、細胞競合の制御に関わる分子やシグナルを探索し、細胞競合の生理的意義を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでin vitroの哺乳類上皮培養細胞系で明らかになった細胞競合現象が、マウス生体内のin vivoの系でも観察できることが明らかとなり、平成27年度終了時としては順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
生体組織内では、個々の細胞の遺伝子発現レベルは周りの環境に応じて経時的に変化する。がんの発症過程において、細胞間相互作用を介して個々の細胞の運命が決定される細胞競合の複雑な制御メカニズムを解明するためには、組織全体の細胞を回収して遺伝子発現レベルを解析する従来の研究手法ではなく、生理学的・病理学的ながん微小環境を維持した上で、1細胞レベルで遺伝子発現を解析する新たな方法論の構築が必要である。今後、蛍光生体イメージング技術の特徴を生かし、細胞競合の制御に関わる分子やシグナルの探索を行う。さらに、得られた分子やシグナルを阻害し細胞競合を破綻させた際に、がん細胞がどのように進展するか解析を行い、細胞競合の生理的・病理的意義を明らかにする。
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