上皮組織は、細胞同士がタイトジャンクションなどの細胞接着を発達させてシートを構築することで、体内の水分の漏れや細菌の侵入を防ぐ生体バリアーとして機能している。この上皮組織の一部が傷つくと、生体バリアー機能が破綻して生命維持が難しくなるため、上皮組織は損傷細胞を除去し、上皮シートを再構成する生体反応(創傷治癒)を引き起こすことが知られている。申請者は、ゼブラフィッシュ胚で創傷治癒のしくみを解析していた時に、ゼブラフィッシュの正常な上皮組織でも細胞競合が起こっており、Fアクチンの動態によって、敗者細胞をあらかじめ(排除される30-60分前に)識別できることを偶然発見した。本研究では、この発見を利用して、正常上皮組織で起こる細胞競合のしくみとその生理的意義を理解することを目的とする。申請者らは、このシステムを活用し、生理条件下で、敗者細胞が排除される過程を詳細に観察し、正常細胞と敗者細胞の間で、アクチンダイナミクスや力学的な違いが生じていることを発見し、領域内の細胞競合コロキウムなどで成果を報告した。また、研究の一部は、論文投稿の準備を行っている。
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