研究領域 | 細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム |
研究課題/領域番号 |
15H01494
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水野 大介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30452741)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞力学 / 力生成 / フィードバックマイクロレオロジー |
研究実績の概要 |
細胞の分化や集団としての組織化、また、個体の発生や形態形成の過程では、遺伝子的・生化学的な要因以外に細胞や周囲環境の力学的な特性や物理的な力による相互作用も重要な役割を果たす。例えば、発生初期や血管系から脱出した直後の悪性度の低い癌組織は、細胞外物質を消化する酵素を十分に分泌しないことが多い。そのために自らが増殖・成長するためには周辺の正常な細胞集団や組織を物理的な力により押しのける必要がある。癌腫瘍の成長に限らず、個体や器官が正常に発達するためにも、細胞間の力学的な競合は重要であると予測される。 本年は、揺らぎの大きな生体環境中に埋め込んだコロイド粒子をフィードバック技術により自動追尾しつつ、Active/Passiveマイクロレオロジーを実行する計測システムをほぼ完成させた。具体的には、細胞内部に埋め込んだコロイド粒子を多重の3次元フィードバックにより自動追尾することで、巨大な非平衡揺らぎが存在する生体試料の揺らぎ応答を精密観測するが、そのために、測定中に刻々変化する試料環境に対応して計測機器軍を連携して調整している。これは時々刻々状態の変化する試料環境にあわせ、複数のフィードバックが連携して調整される申請者独自の計測システムである。慣性した計測システムを用いて、次年度以降に、限られた空間を奪い合う細胞競合現象の力学的なプロセスに焦点をあてた実験的な研究を遂行できるようになった。 また、当初計画した研究提案以外にも、細胞競合シンポジウムや領域会議における議論を生かし、領域内共同研究も遂行し始めた。特に藤田グループ、森グループと相互に研究訪問を行い、生物試料の操作方法や提供を受け、当該試料をマイクロレオロジー観測するための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した機器開発は概ね順調に推移した。“フィードバック制御された”非平衡力学系として、当該測定器環境下のプローブの挙動を解析する理論も構築し、実験的によりその正当性を確認した。当初の予定にない共同研究にも着手をしている。したがって概ね本研究課題の進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在順調に進行しているために、本年度も当初の研究提案に沿って遂行する。ただし、特別仕様の細胞伸展器のみ、業者都合によりその詳細設計図面の作成が遅れている。既に昨昨年度前期には、大まかな案を示して試験機を納入してもらったが、現在問題点を克服した詳細図面の作成を依頼しているために、これを急がせる必要がある。当初の予定になかった共同研究等も開始しているために、他の研究助成にも応募して研究資金の手当てをする必要がある。
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