研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
15H01504
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | TET / ヒドロキシメチル化シトシン / 白血病 / 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 / RHOA |
研究実績の概要 |
(背景)造血幹細胞では、加齢に伴いDNAメチル化修飾の変化が生じている。この変化が造血幹細胞の「前がん細胞化」に関わるか否かは明らかでない。 (目的)DNAのメチル化シトシン(5mC)をヒドロキシメチル化シトシン(5hmC)に変換する酵素(TET1、TET2、TET3)の機能不全による5mCから5hmCへの変換障害と、造血幹細胞の「前がん細胞化」との関連を解明する。さらに、前がん細胞化した造血幹細胞から血管免疫芽球性T細胞リンパ腫が発症することを実証する。 (方法と結果)(1)TET酵素をコードするTet2およびTet3を、ヘテロまたはホモに造血幹細胞で欠損するマウスを作製し、造血幹細胞の前がん細胞化の検討を行っている。両遺伝子のヘテロ欠失(Tet2+/-Tet3+/-)マウスは、欠失から1年を経過しても白血病発症の兆しはなかった。一方、いずれか一方をホモ欠失、他方をヘテロ欠失したマウスは、欠失から6ヶ月を経て急性骨髄性様病態を呈し死亡し始めた。さらに、両遺伝子をホモに欠失したマウスは、欠失から約1ヶ月を経て短急性骨髄性白血病様の病態を呈し、2ヶ月以内に約80%のマウスが死亡した。(2)造血幹細胞でTet2をホモ欠失し、かつT細胞でG17V変異RHOAを発現するマウスを作製したところ、約8ヶ月で血管免疫芽球性T細胞リンパ腫様の病態を呈するようになった。 (結論)TET酵素遺伝子の欠損の程度に依存して、急性骨髄性白血病が発症することが明らかになった。5mCから5hmCへの変換障害の程度に依存しているものと推察される。また、TET酵素機能不全とG17V変異RHOA発現の組み合わせにより、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫が発症することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスは予定通り作製し、フェノタイプの解析は順調に進んでいる。今後、特にTet2およびTet3のいずれか一方をホモ欠失、他方をヘテロ欠失したマウスについての解析を進めることで、目的遂行が可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)TET酵素遺伝子の欠損の程度依存性の急性骨髄性白血病発症が、5mCから5hmCへの変換障害の程度に依存していることを実証する。 2)5mCから5hmCへの変換障害が比較的弱い場合に造血幹細胞が前がん細胞化していることを実証する。 3)造血幹細胞で弱い5mCから5hmCへの変換障害が生じ、その造血幹細胞に由来するT細胞でG17V変異RHOAが発現した場合に血管免疫芽球性T細胞リンパ腫が発症することを実証する。 4)以上が予定通り進捗した場合、我々がTet3遺伝子のポジティブ・フィードバック機構の責任領域ではないかと推察している領域を特異的に欠失するマウスを作製し、ポジティブ・フィードバック機構の存在を実証する。
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