研究実績の概要 |
胎児の幹細胞である卵子は、母体の加齢と共に「卵子の質」が低下し、染色体異常などの胎児疾患や流産のリスクを引き起こすことが知られている。しかし、母体の老化と胎児の疾患原理の詳細は依然不明なままである。 マウス卵巣において、卵子は顆粒膜組織にゆりかごのように取り巻かれて、顆粒膜組織によってBMPやFGFシグナルが卵子に供給され、卵子の成熟を制御することが知られている。 研究代表者はこれまでに、TGF-bスーパーファミリーに属するNodalシグナルの構成因子であるリガンドNodal、転写因子FoxH1が、卵子と顆粒膜組織に発現していることを発見した。さらに、Cre トランスジェニック(Tg)マウスを用いて、卵子、顆粒膜特異的にNodalとFoxH1それぞれのコンディショナルノックアウト(cKO)を行った結果、胎児期の卵割期から着床前胚にかけて胎児疾患を起こすことを明らかにした。加えて、卵巣におけるNodalシグナル標的因子のスクリーニングを行い、現在までにNodalシグナルの機能の一部を担うOFT1(Oocyte FoxH1 Targeted gene 1)遺伝子を同定している。これらの結果より、若年卵巣において、卵子幹細胞ニッチのNodalシグナルはOFT1を介して、胎児発生を制御していることが明らかになった。 Nodalシグナルの過剰/不足はマウス胎児発生期の左右・前後軸形成や、原腸陥入期やES/EpiStem細胞の細胞分化の異常を引き起こすことが知られており、Nodalシグナルを一定に保つということは正常な分化能、パターニングを維持するために必須である。(Nakamura et al., 2006) (Takoaka et al., 2007)。代表者は加齢(1歳以上)の卵子において、Nodalシグナルの活性が上昇していることを発見している。
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