公募研究
近年、造血幹細胞領域を中心に、加齢によるリボソームの変化が注目されつつある。リボソームの機能は過剰にすぎても抑制されてもHSCの可塑性維持に不都合が生じることがわかってきた。リボソームを構成する因子は約80種類のリボソームタンパク質と4種類のリボソームRNA(rRNA)であるが、この生合成には多くの因子が必要で、とりわけpre-rRNAのプロセシングは、数百に及ぶトランス因子の作用で段階的に秩序だって行われる。また、リボソームDNA(rDNA)領域は、合計数百のrDNA遺伝子により構成され、数多くの複製開始点を有することが知られる。最近、この領域のDNA複製障害の蓄積が老化造血細胞の特徴のひとつであることが提唱されており、リボソーム生合成のコントロールを起点とした細胞制御システムが加齢現象に深く関わることが注目されつつある。こうしたことを背景とし、本研究では造血細胞の加齢変化をリボソーム変化として捉えることに注力してきた。まず、老化HSCでは、リボソーム合成関連因子が広汎に発現低下することを見出した。また、これに伴ってDNA複製システムの機能抑制が起こることも確認された。この実験では、造血細胞においてpre-rRNAプロセシングに関与するDDX41のドミナント・ネガティブ変異体を発現させた。これによって、pre-rRNAのプロセシングが障害され、成熟rRNAの合成が抑制されたが、この際、DNA複製に関わる多くの因子の遺伝子発現低下が認められ、これは老化HSCの遺伝子発現変化と酷似していた。こうした結果は、我々の当初の予想どおり、リボソーム生合成経路の機能抑制が加齢変化に直接関与することを示唆しており、また、リボソーム生合成障害がDNA複製ストレスを惹起することを想起させた。両者を結びつけるシグナル伝達経路を特定することが今後の研究課題といえる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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