研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
15H01516
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西山 正章 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50423562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞老化 / エピジェネティクス / 発がん / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は「組織幹細胞の若返りによる疾患治療」を目指し、クロマチンリモデリング因子CHD8による幹細胞老化制御メカニズムの全貌を解明すると共に、神経変性疾患やがんなどの加齢関連疾患にこのシステムがどのように関与しているのかを明らかにすることを目的としている。われわれはCHD8が神経幹細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞において高発現していることを明らかにした。最近、自閉症スペクトラム障害の最も有力な原因候補遺伝子としてこのCHD8が同定され、世界中で大きな反響を呼んでいるが、われわれはヒト自閉症患者のCHD8変異を再現したモデルマウスを作製し行動解析を行ったところ、このマウスが自閉症様の行動異常を再現することを確認した。われわれが作製した神経幹細胞特異的なCHD8ノックアウトマウスは神経の発生異常により幼少期に死亡することが明らかになっている。またCHD8ヘテロ欠損マウスは高脂肪食誘導性の肥満に対して抵抗性を示すことが分かっているが、間葉系幹細胞特異的にCHD8を欠損させたマウスは著しい脂肪組織の減少を来すことから、CHD8へテロ欠損マウスの抗肥満表現型は脂肪分化異常が原因であるものと考えられた。さらにCHD8を欠損した造血幹細胞は、老齢マウスの造血幹細胞と類似した異常な増加が観察され、骨髄移植実験における骨髄再構築能力が著しく障害されていることが明らかになった。これらの結果から、CHD8による幹細胞制御システムは神経発生、脂肪分化および造血幹細胞の機能維持において重要な働きを担っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの組織幹細胞においてCHD8欠損による幹細胞制御システムの破綻が幹細胞機能を障害することが判明したことにより、CHD8による幹細胞制御の重要性が明らかになりつつある。神経幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞特異的CHD8ノックアウトマウスを作製し、自閉症、肥満症および骨髄機能不全に関して詳細な機能解析を行い、これらの病態にCHD8による幹細胞機能障害が関与していることが明らかになった。これらの知見は当初の研究目的に適っており、順調に達成されつつあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
プロテオーム、ChIP-SeqおよびRNA-Seq解析によって、幹細胞におけるCHD8の標的遺伝子を網羅的に探索することにより、CHD8による幹細胞老化の制御機構を解明する。またCHD8のプロモーター領域を解析し、遺伝子発現に影響を与えるシス領域を決定すると共に、そこに結合するトランス因子を同定する。さらに組織幹細胞へのCHD8の発現誘導が生体内でがんを起こすかどうかを検討するために、発現誘導型CHD8トランスジェニックマウスの自然発がんまたは誘発がん(神経・造血・腸管・皮膚など)の発生率と生命予後について検討する。最終的には、がんを起こさずに個体老化を抑制する発現レベルを決定する。
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