研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
15H01519
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
滝澤 仁 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘准教授 (10630866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 造血幹細胞、炎症、感染 |
研究実績の概要 |
本研究では、炎症を老化の一因と捉え(炎症性老化)、炎症性環境・因子がHSC機能恒常性を変容させ、HSC老化を引き起こす機序を解明する。さらに、HSCの悪性転換、結果的に腫瘍化に至る過程における炎症性因子の役割を明らかにする。加齢変化の新たな特性として慢性炎症に注目し、老化と炎症モデルの相互比較から幹細胞老化の本質理解及び先制医療に向けた新たな老化予防法の確立を目指す。上述の研究課題を解決すべく以下の2つの目的に沿って研究計画を立案した。そのうち、今年度に達成したものを記載する。 目的1)炎症性因子の造血幹細胞老化への関与 A.老化因子がHSC機能に与える影響:高感度HSC細胞分裂頻度解析法(Takizawa H., 2011)により、細胞性・環境性老化因子がHSC細胞分裂頻度・自己複製・分化能に与える影響を評価した。B.感染関連炎症性因子がHSC機能に与える影響:広範な炎症性因子を発現誘導する感染モデルを用いてHSC機能変化を探る。 目的2)炎症性因子の造血幹細胞悪性転換への関与 A.炎症が造血器腫瘍化に与える影響:造血器腫瘍マウスモデルに慢性炎症を誘導し、炎症がHSCの悪性腫瘍化・造血器腫瘍の発症・進行に与える影響を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1に関しては4つの項目を設定しているが、そのうち2項目について研究の進展が見られた。また、目的では3つの項目中、1つについて詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の項目について重点的に研究を進めていく。 目的1)炎症性因子の造血幹細胞老化への関与について C.炎症性老化因子の同定:網羅的蛋白質・遺伝子解析を用いて、目的1)-A.と目的1)-B.の条件で発現する因子の比較により、炎症性老化因子の候補を絞る。上述のHSC細胞分裂頻度解析法または遺伝子欠損マウスにより単独候補因子の機能評価を行い、責任炎症性老化因子を同定する。D.炎症性老化因子の機能阻害による抗老化作用の評価:目的1)-C.で同定された炎症性老化因子の機能を薬理的に阻害し、HSC老化を予防できるか検討する。 目的2)炎症性因子の造血幹細胞悪性転換への関与 A.炎症がDNA変異率に与える影響:老化または炎症を誘導したマウスから精製したクローナルなHSCに対しWhole Genome/Exome Sequencingを行い、一塩基置換頻度の測定を行う。B.炎症が造血器腫瘍化に与える影響:造血器腫瘍マウスモデルに慢性炎症を誘導し、炎症がHSCの悪性腫瘍化・造血器腫瘍の発症・進行に与える影響を継続して評価する。C.炎症性老化阻害による造血器腫瘍の予防:目的1)-D.で同定される炎症性老化因子の機能を阻害し、造血器腫瘍対する予防効果を目的2)-A.と目的2)-B.の方法で評価する。
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